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名著17冊の著者との往復書簡で読み解く 人事の成り立ち の商品レビュー

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11件のお客様レビュー

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2019/04/28
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※このレビューにはネタバレを含みます

職場の上司が読んでいたことがきっかけだったが、流行りものに飛びつく前に歴史と王道を知っておきたかったので読了。 本書を読み解くと、「年功序列」や「終身雇用」は日本型雇用の枝葉であり、幹は「無限定雇用」、根っこは「誰もが階段を上る社会」だと説明している。「女性活躍の阻害」「ライフ重視への異端視」「長時間労働」という問題も同じ幹から伸びた枝葉である。また、「人材育成」「雇用保障」「職能等級」も同じ枝葉であり、枝葉一つ一つを切り取って良し悪しを議論しても、システムとして機能している以上あまり意味がないことが理解できた。 本書を起点として考えたい議論の展開は、「①日本型雇用の良さを残しながら、デメリットをどうやって軽減していくか」と「②日本型雇用を活かした人材育成や組織力強化の形はなにか」である。 ①について 本書に記される一つの解は「階段に踊り場を設ける」ことだが、「新卒は能力<報酬、熟練は能力>報酬」が標準運用な職能給制度では、踊り場を活用する人が増えるほど社会は余計に報酬を支払うことになる。持続的な踊り場の実現のためには、能力=報酬になるような評価に少しずつシフトすることが必要だと思う(年功カーブをきつくする、同年功の報酬幅を広げる、など)。ただし、逆転してしまうと若者の使い捨てが起きてしまうのでNGか。 ②について せっかくある「階段」を活かす方向で考えてみたい。つまり、①の踊り場を設けながらも、階段を上りたくなる人を増やす施策が必要だと思う。言い換えると、どうやって魅力的な階段を作るかだ。 そう考える理由は、会社の外にある。 会社の中では、原則として経営者は階段を上る機会を与えるのみで、上るかは本人次第。そこまではいい。本人の意思で職責も報酬も決まるのですごく良い仕組みだと思う。 一方で、会社の外に目を移してみたい。2つの会社(階段を上る人が多い会社と少ない会社)が一つの市場で争ったとする。その結果(売上)は、階段を上った人の数に比例して双方の会社に配分されるわけではなく、勝った会社が総取りになる。したがって、負けた会社は階段を上った人もそうでない人も総じて配分はなくなってしまう。最悪、会社もなくなり、職も失う。これは満場一致でみんな避けたいと思うでしょ。 そのために、貴重な人生の1/3を費やす仕事に値する魅力的な階段を設計したい。 まず最初に必要条件として、「階段が見えること」=キャリアパス。しっかり固まったものでなくてもいいし、先の方は雲で隠れているぐらいの方が魅力的かもしれない。2つ目に、階段を上がっているという実感。数年単位で上がる等級よりもっと細かい階段が必要で、1年・半年で振り返って「ここまで来たか」と思えるような成長と振り返り、ぐらいがいい。キャリア研修や1on1マネジメントが奏功するかも。3つ目に、みんなで登っている感覚。チームワークの実感や達成感の共有ができる機会があるといい。挫折しそうな時に肩を支え合えたり、到達した喜びを共有できる関係では、お互いの階段を共有できていると思う。最後の4つ目は、「一緒に働く先輩や上司の魅力的な背中」。先に階段を上っている人が、どんな風景を見ているのか、その顔は活き活きとしているか、大きなことを成し遂げているか、人生が充実しているか、自分がそうなりたいか。先輩や上司がいつも良い背中を見せるべきだ!と糾弾することはたやすい。その通りだと思う。と同時に、後輩や部下がしっかり見ているか(話をしているか)もポイントだと思う。自分ゴトでもあるが、先輩・上司への愚痴が多い人は、自分で「こういう人間だ」と決めつけてしまう人が多いと思う。たしかに、そう判断するに値する行動を取ったにせよ、本心は確認してないだろう?本人に確認してみては?人間は、みんな多面性があるよ?と思う。 といいつつ実感としては、実は4つ目があれば、階段などなくとも部下や後輩は勝手に成長していくもんじゃないかと思っている。本書にもあったが、日本では古くから、殿ー家来、師匠ー弟子、という「身分契約」によって成立してきた社会である。殿や師匠という身分がどのように仕事ぶりや姿勢に学ぶ下位者の姿は容易に想像できるだろう。 つらつらと書いてたら話がだいぶ逸れてしまったけど、人事について雇用システムの根幹について触れることができて、今後、発展的に考えていける立脚点ができた。

Posted byブクログ