夜這い団地 の商品レビュー
夜這いさせられている主人公
この作者にしては珍しい気がするチェリーではない25歳の主人公。冒頭ではホラーっぽい雰囲気を(テレビの心霊番組を深夜に観ているだけだが)醸して、それを夜這いしてきた女性と結びつけて当初は怖がったりしている。だが、むしろ団地特有の構造に着目している点が妙味に繋がった作品と言える。 ...
この作者にしては珍しい気がするチェリーではない25歳の主人公。冒頭ではホラーっぽい雰囲気を(テレビの心霊番組を深夜に観ているだけだが)醸して、それを夜這いしてきた女性と結びつけて当初は怖がったりしている。だが、むしろ団地特有の構造に着目している点が妙味に繋がった作品と言える。 夜這いする女:? 夜這いを誘導する30歳の人妻【乃梨江】B棟501号室 夜這いを仕掛ける26歳の先輩【亜衣香】B棟303号室 夜這いを依頼する33歳の人妻【友希子】E棟202号室 将来を見据える28歳のバツイチ【涼菜】D棟303号室 突如として部屋へ現れ、布団を捲り上げ、仰向けで眠っている(フリをしている)主人公に跨ってくる女が誰だか皆目分からないのは想定内の始まり方。この真相究明に乗り出す流れである。偶然に出会った乃梨江が同じB棟だからそうなのか?と思ったら、ちょっと理不尽な屁理屈で誘惑されたり、大学時代の先輩だった亜衣香と鉢合わせしたら意外に明け透けな人物になっていて、鈍感者には決して伝わらないであろう「察しなさい」的な誘惑を主人公の自室(B棟303号室)でされたり、乃梨江の友人である友希子には寝取らせのダシにされたりしている。ここまで全て形式こそ夜這いではあるが、結局のところは三者三様ながらも押し並べて自己中心的なサブヒロイン達の思惑に乗せられ、夜這いをさせられているのが実情である。自らの本懐は一向に果たせず、肉欲的な僥倖を除けば全く以って報われない主人公である。 そんな時に、団地では割とありがちな偶発的アクシデントによって涼菜と出会う。B棟とは隣同士で並び建つD棟の同じ303号室がポイントである。遂に判明する夜這いの真相に加え、他にも理由があったことから、いろいろな偶然が必然を呼び込んだ形になっている。ドラマとして面白い仕上がりと言えよう。最後に夜這いとは異なる、堂々とした情交を描くことで従前との対比を感じさせている。 倒置表現を多用し過ぎの傾向があり、ややとっつきにくい文章に感じたが、物語性のある官能劇として楽しめる1冊だと思う。
DSK
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