恋牡丹 の商品レビュー
「戸田義長」の連作時代小説『恋牡丹』を読みました。 ここのところ時代小説が続いていますね。 -----story------------- 北町奉行所に勤める「戸田惣左衛門」は、『八丁堀の鷹』と称されるやり手の同心である。 七夕の夜、吉原で用心棒を頼まれた「惣左衞門」の目前で、...
「戸田義長」の連作時代小説『恋牡丹』を読みました。 ここのところ時代小説が続いていますね。 -----story------------- 北町奉行所に勤める「戸田惣左衛門」は、『八丁堀の鷹』と称されるやり手の同心である。 七夕の夜、吉原で用心棒を頼まれた「惣左衞門」の目前で、見世の主が刺殺された。 衝立と「惣左衞門」の見張りによって密室状態だったのだが……『願い笹』。 江戸から明治へと移りゆく混乱期を、「惣左衛門」とその息子「清之介」の目を通して活写した。 心地よい人情と謎解きで綴る全四編を収録。 本書は第27回「鮎川哲也賞」最終候補として、受賞作の『屍人荘の殺人』、優秀賞の『だから殺せなかった』に次ぐ評価を受けた。 文庫オリジナル。 ----------------------- 同心親子の目と四つの事件を通して、江戸末期を丁寧に描いた、新たな時代ミステリです、、、 第27回「鮎川哲也賞」選考会にて、残念ながら受賞とはなりませんでしたが、心地よい人情話と、謎解きの融合した見事な書きっぷりが評価された作品です。 ■花狂い ■願い笹 ■恋牡丹 ■雨上り 『花狂い』と『願い笹』は「戸田惣左衛門」が主人公… 『恋牡丹』と『雨上り』は「惣左衞門」の息子「清之介」が主人公となって事件を解決する展開でミステリ色が強い作品でしたね。 面白かったのは、 長屋の一室で扼殺されていた「お貞」… 夕餉を準備中の凶行で、鍋には豆腐が煮えていた、、、 長屋の皆は桜見物に出かけており…… 母親も女なんですよねー 動機を探るホワイダニット物の『花狂い』。 吉原で急に用心棒を頼まれた「惣左衞門」の目の前で、見世の主が殺害された… 衝立と「惣左衞門」によってある種の密室だったはずなのだが、、、 ほぼ密室での殺害方法を解き明かす(なんと!謎解き役は花魁の「牡丹」)ハウダニット物の『願い笹』。 の2篇かな… 特に『花狂い』は、桜の情景が美しい分、結末が切な過ぎる印象的な作品でしたね。 『恋牡丹』はアリバイ物ですが、トリックは他の作品でも読んだことがあるような… 『雨上り』はホワイダニット物ですが、「清之介」の鈍感ぶりが際立っていて、やや物足りませんでしたね。 でも、トータル的には満足かな… 次作があるなら読んでみたいなー と思わせる作品でした。
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最初の作品は始まりの説明が結構のりきれなかったけれどその後はミステリの面白さと幕末への空気を走らせる作品で、よかったです。
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主人公のはずが実はワトソン役で、ホームズになる身近にいる美女の謎解きに翻弄される、という日本のミステリにありがちな設定だが、幕末の騒乱期の渦中にあるというあたりが新奇な趣向。とはいえ四編それぞれの背景になる社会情勢の変化が急すぎて落ち着かない。続編の「雪旅籠」で描かれる合間のエピ...
主人公のはずが実はワトソン役で、ホームズになる身近にいる美女の謎解きに翻弄される、という日本のミステリにありがちな設定だが、幕末の騒乱期の渦中にあるというあたりが新奇な趣向。とはいえ四編それぞれの背景になる社会情勢の変化が急すぎて落ち着かない。続編の「雪旅籠」で描かれる合間のエピソードで戸田父子、花魁牡丹の絡みをゆっくりと楽しみたい。
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かつて『八丁堀の鷹』と呼ばれた北町奉行所同心・戸田惣左衛門。彼と息子・清之介が遭遇する事件を描く。 第一話の「花狂い」。 貧しい母子家庭の母親が殺される。 目撃者が少ない中で惣左衛門は被疑者を描いては打ち消していく。そんな中で、幼い清之介の言葉をヒントに真相に辿り着くのだが、そ...
かつて『八丁堀の鷹』と呼ばれた北町奉行所同心・戸田惣左衛門。彼と息子・清之介が遭遇する事件を描く。 第一話の「花狂い」。 貧しい母子家庭の母親が殺される。 目撃者が少ない中で惣左衛門は被疑者を描いては打ち消していく。そんな中で、幼い清之介の言葉をヒントに真相に辿り着くのだが、それは予想出来たものの、あまりに切なく結末も痛々しい。 第二話以降もそのパターンなのかと思いきや、探偵役は花魁の牡丹に変わる。 西洋風の衝立に四方を囲まれ、その外で被害者を見守っていた惣左衛門の目の前で殺人が起こる。 図解付きで急に本格っぽくなるのだが、これまた大体の想像は付く。 しかし惣左衛門はさっぱり訳が分からず、縁の出来た牡丹が探偵役として犯人を追い詰める。 第三話では成長し同心見習いとなった清之介が遭遇する事件を隠居した惣左衛門の妻となった牡丹改めお糸が解決に力を貸す。 さらに最終話は時が流れ、明治の世となって同心としての職や地位が危うくなってきた清之介が扱う事件。 下手人の女の動機が分からない清之介に指南するのはお糸に代わり、妻の加絵。 それにしてもこの惣左衛門・清之介親子は直情型で俯瞰出来ないようだ。さらに女心が分からない。 何が『八丁堀の鷹』だ。自分が見たい景色しか見えていないじゃないか。むしろ第三者である読者の方が先に真実が見えてくる。 代わりに冷静に俯瞰した視点で解き明かすのかお糸であり、女心を解説するのが加絵だ。 惣左衛門の亡くなった前妻も可哀想だが清之介たち息子も可哀想な気がする。 前妻を妻として女として向き合って来なかった反省と母親を忘れたくないという清之介を思って後添いは娶らないと決めた惣左衛門なのに、お糸に出会った途端に親子ほど年が違う女に逆上せて息子に相談もなく後妻に迎える。 さらに清之介もそのお糸に思慕を寄せ、妻の加絵をないがしろにしている。 本当に似た者親子だ。 母親が女になることは殺されるほど許されないのに、父親が男になるのは許される。 薹が立った女は見向きもされず女扱いされることを望むことすら気持ち悪いとされるのに、いい年した男が親子ほど年の違う女に逆上せて顔を赤くしても仕方ないなと大目に見られる。 作品全体を通して描かれる性差感にずっとモヤモヤしていた。 加絵や惣左衛門の前妻、最終話のお吉を思うと息苦しいほど切なくなる。 最終話に加絵が苦しみながら清之介にそれを突きつけるシーンは溜飲が下がるというよりも、余計に清之介や男たちに腹が立ち同時に女たちの苦しみを感じた。 それでもお糸に釘を刺され加絵に訴えられてようやく眼が覚めた清之介は最後の最後に踏みとどまり、何とか再出発出来そうでホッとした。 キャラクター、ミステリー要素どちらもイマイチだったが、明治に変わって同心という立場が変わっていくところは興味深かった。だがその辺はもう少し深掘りして欲しかった。
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