崖の上で踊る の商品レビュー
+++ 那須高原にある保養所に集まった、絵麻をはじめとする十人の男女。彼らの目的は、自分たちを不幸に陥れた企業「フウジンブレード」の幹部三人を、復讐のために殺害することだった。計画通り一人目を殺した絵麻たち。次なる殺人に向けて、しばしの休息をとった彼らが次に目にしたのは、仲間の一...
+++ 那須高原にある保養所に集まった、絵麻をはじめとする十人の男女。彼らの目的は、自分たちを不幸に陥れた企業「フウジンブレード」の幹部三人を、復讐のために殺害することだった。計画通り一人目を殺した絵麻たち。次なる殺人に向けて、しばしの休息をとった彼らが次に目にしたのは、仲間の一人の変わり果てた姿だった―。クローズドサークルの名手が挑む、予測不能の本格ミステリー。 +++ とても著者らしい組み立て方の物語である。かなり凄惨な場面も多く、目をそむけたくなることもあるのだが、そこはさらっと描き、理詰めでひとつずつ目の前にある要素を積み上げていく。場面上荷動きは多くなく、考えながら語る部分が多くて、退屈しそうにも思うのだが、そこが著者の巧みなところだろう。時系列で起こったことを思い出しながら、語りにのめり込んでしまう。いくつもの殺人を目の前にし、残虐な復讐をそれでも続けようとする人たちにはとても見えない穏やかさすら感じてしまうのが不思議である。息をつめてのめり込む一冊である。
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復讐のために一致団結し、三人の人間を殺すことに決めた十人の男女。無事一人の殺害を終えた後、なぜか殺害された仲間。犯人はなんのために殺したのか、そして練りに練った復讐計画は無事成し遂げられるのか。ひりひりするような緊迫感が漂うミステリ。 盤石の計画と強い絆に結ばれた仲間、のように見...
復讐のために一致団結し、三人の人間を殺すことに決めた十人の男女。無事一人の殺害を終えた後、なぜか殺害された仲間。犯人はなんのために殺したのか、そして練りに練った復讐計画は無事成し遂げられるのか。ひりひりするような緊迫感が漂うミステリ。 盤石の計画と強い絆に結ばれた仲間、のように見えた彼らの関係が、疑心暗鬼から瓦解しそうになっていくのがとても危うくてはらはらさせられます。まさしく崖の上。どんどん人数が減っていく中、誰が敵なのか誰が味方なのか。いやいや、誰一人信用できないぞこれは! 犯人が誰か探し当てる部分はオーソドックスなミステリかと思いきや。プロセスはオーソドックスでも思考回路が……まずは復讐計画ありき、で事態を収束させようとするという手法が既に異様で理解不能。というか、理解はできても共感がついていきません。大丈夫かこの人たち。最初はまともそうに思えたあの人もこの人も、とても邪悪……復讐って恐ろしい。
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2018年133冊目。特殊な状況を作り上げ、その状況に即した論理を展開していくことでは右に出るものはいない。復讐者だからこそ生まれる感情が、見事な論理で明らかになっていくのは素晴らしい。その上で、ストーリーにもう少し深みが欲しかった。
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今回も盤石な石持作品でした。特異な状況下での連続殺人と、仲間が次々死んでも焦らずに沈着冷静な人達と、何となく納得させられてしまう真相。もう、著者名を隠して読んでも石持さんだと分かる構成です。 こういう似たパターンが続いても飽きずに読めるのは、シチュエーションの巧さだろうなあ。もは...
今回も盤石な石持作品でした。特異な状況下での連続殺人と、仲間が次々死んでも焦らずに沈着冷静な人達と、何となく納得させられてしまう真相。もう、著者名を隠して読んでも石持さんだと分かる構成です。 こういう似たパターンが続いても飽きずに読めるのは、シチュエーションの巧さだろうなあ。もはや老大家並みの安定感だね(^-^)。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
書店で見かけると、つい手に取ってしまう。約1年ぶりと、石持浅海さんにしては長いインターバルを経ての新刊である。相変わらずの石持節なのであった。 史上最悪の復讐劇が今始まる!などと帯には書かれているが、『凪の司祭』の方がはるかに最悪だ。『凪の司祭』が不特定多数への復讐なら、本作は企業を相手にした復讐を描いている。復讐に至る心理自体は、少なくとも理解できる。 企業に対する集団訴訟は現実にも耳にするが、あくまで司法の下での戦いである。本作は違う。相手企業の社長ら幹部3人を、殺そうというのだ。それぞれ人生を壊された面々に同情はするものの、これだけの賛同者が集まるとは。まさに石持作品。 憎き相手企業の保養所に集まり、まずは首尾よく1人目を始末した復讐者たち。ところが、メンバーの1人が殺された。同じ目的で集まったはずなのに、妨害行為か? 石持作品にはお馴染みの、クローズド・サークルに突入である。 既に1人を殺し、これからさらに殺す予定なのだから、もちろん警察など呼べない。それらしい動機と犯人を推理してみるものの、どれも決め手に欠ける。こんな非常事態にあっても、復讐の延期はまったく頭にないのか、この人たち。次は自分が殺されるかもしれないのに。 毎回、設定には工夫を感じるし、今回も興味深い設定ではあるけども、クローズド・サークルにおける堂々巡りの議論は毎度毎度であり、デビュー当時から変わっていない。それが持ち味ではあるのだが…。今後も変わらないのだろう。それでも読んでしまう何かが、石持作品にはあるのか。 その「何か」がわからないから、知りたいから、自分は石持作品を読むのだろうか。『凪の司祭』に激怒したのに、結局読み続けている。いつもすっきりしない幕切れだが、今回は悪くない気もしないでもない。いや、すっきりはしないけれども。 ところで、『二千回の殺人』という幻冬舎文庫が出ていたが、『凪の司祭』の改題でした。
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