岡山県のことば の商品レビュー
Kazuさんの紹介には岡山弁を使った小説の分析が書かれていて、「軽い蘊蓄本なのかな」と思っていたら、あに図らんや、税別4500円もする専門書でした。 確かに同じ県といえども、方言は微妙に違う。本書では県北を2つ、県南を2つに分けて、さらに隣県(兵庫・香川)の影響を受けた飛地地域...
Kazuさんの紹介には岡山弁を使った小説の分析が書かれていて、「軽い蘊蓄本なのかな」と思っていたら、あに図らんや、税別4500円もする専門書でした。 確かに同じ県といえども、方言は微妙に違う。本書では県北を2つ、県南を2つに分けて、さらに隣県(兵庫・香川)の影響を受けた飛地地域を分類している。そういえば、県北の津山に住んでいた時には「〜しんちゃい(〜しなさい)」の言葉など、まるで山口弁のようだと思ったことがある。 でも、私は言葉の専門家ではないので、小説言葉以外に面白かったところをメモして楽しんだ。以下は突然、私流の岡山弁になる。時々翻訳は省略するけーの(するからね)。 ・専門家から見よーたら、動詞「いたむ」ことを表す五つの動詞「イタム」「ウズク」「イバル」「ハシル」「二ガル」が、それぞれ身体の部位の痛みを表しょーるみてーで、「注目に値する」らしーで。 ・普通の「岡山方言番付」は、せいぜい50言葉ぐれーしか無(ね)ーけど、なんとこの本は8割方は辞書みたいになっとる。岡山県に住んで長(なげ)ーけど、こげな(こんなに)よーけ(沢山)岡山弁を見たんは初めてじゃ。 ・「室町は今日もハードボイルド」(清水克行)で、馬鹿の古語ちゅーて「アンコウ」が岡山県方言として使(つこ)ーとるて書いとったけど、全然無(ね)かったで。「アンゴー」はあったで。 ・藤井風の「なんなん」が岡山弁としてヒットしょったらしいけど、無かったで。そん代わり、OHKの夕方番組名になっとる「ナンション?(何をしてるの?)」は、入っとったで。 ・そねーな かっこー したら ふーが わりー。‥‥これが方言とは思わんかった。(そんな格好したらみっともない) ・「ことわざの中の岡山弁」は面白(おもしれ)ーのが、ぼっけー(凄く)あったで。例えば、 ◯寝小便たれをいなし(帰らし)て、寝糞たれを貰う。 ◯おぞやきょうとや(ゾッとして恐ろしい)他人と闇は。 ◯こもう(小さく)生んで大きゅう育てえ。 ◯親の代から大工でも人の口には戸はたたぬ(閉められない)←これって、岡山方言なのかなあ ◯ナマメ筋には家は建てられん (ナマメ筋=動物や妖怪の通り道として恐れられている道筋) ‥‥「日本のことばシリーズ」の一冊。色んな人がこのシリーズで、夫々の「お国言葉」を紹介してくれたら、楽しいと思う。
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日本のことばシリーズ全48巻(既刊は30巻)の1冊。 岡山にゆかりのある作家の岡山県方言を含む作品の紹介もある。 内田百閒、横溝正史、石川達三、あさのあつこ、重松清、岩井志麻子、など13人。 小川洋子と原田マハはなかった。岡山弁が使われている作品がないのだろう。 岩井志麻子の「...
日本のことばシリーズ全48巻(既刊は30巻)の1冊。 岡山にゆかりのある作家の岡山県方言を含む作品の紹介もある。 内田百閒、横溝正史、石川達三、あさのあつこ、重松清、岩井志麻子、など13人。 小川洋子と原田マハはなかった。岡山弁が使われている作品がないのだろう。 岩井志麻子の「ぼっけえ、きょうてえ」は、全編が岡山弁という地方の言葉で書かれている画期的な小説らしい。 横溝正史の「岡山もの」長編6作品での岡山弁は詳しく調べられている。 作品名の右の数値は岡山弁出現度。岡山弁でしゃべっていない作品もあるのだ。 『本陣殺人事件』0 『獄門島』50 『夜歩く』5 『八つ墓村』25 『悪魔の手毬唄』90 『悪霊島』85 『獄門島』の場合のある会話の場面。 「ほら、あの高いところに見えるのがわしの寺じゃ。それからその下に、大きな白壁の家が見えるじゃろ。あれがこれから、おまえさんの訪ねていこうという鬼頭の本家じゃ」 となっているが、岡山弁全開モードだったら、 「ほりゃ、あのたけえところに見えるんがわしの寺じゃ。せえからそのしてえ、大けな白壁の家が見えるじゃろ。ええがけえから、おめえさんの訪ねていこうゆう鬼頭の本家じゃ」 のようになる。 読者に分かりにくくならないように、岡山らしさを加味しており、このあたりが雰囲気を感じながら読むのにちょうど良さそうだ。 『悪魔の手毬唄』や『悪霊島』だと、言ってることが分からない表現が出てくる。 岩井志麻子の「ぼっけえ、きょうてえ」の読者のレビューを読んでいると、方言まじりの口調が読みづらいという人もいる。 多くの人がタイトルの「ぼっけえ、きょうてえ」の意味が分からないでしょうね。 文学作品の方言は、雰囲気だけ感じられる程度のものがよさそうです。
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後ろの方に、「横溝正史の『岡山もの』に見られる岡山弁の諸相」という論考が収載されていた。 岡山弁をどの程度表現すれば良いのか、その匙加減を一連の作品で試行錯誤している様子があるとして、具体的に解説しているのが面白かった。 「Ⅲ章 方言基本語彙」という、全国調査の項目を岡山弁で調...
後ろの方に、「横溝正史の『岡山もの』に見られる岡山弁の諸相」という論考が収載されていた。 岡山弁をどの程度表現すれば良いのか、その匙加減を一連の作品で試行錯誤している様子があるとして、具体的に解説しているのが面白かった。 「Ⅲ章 方言基本語彙」という、全国調査の項目を岡山弁で調べたというところも面白かった。 実際に自分では話せないのでイントネーションが再現できずもどかしいが、「聞いたことがある」という言葉の解説はなかなか楽しめた。 「岡山県における成句表現」の項目をみていたら「セーマー フル」が載っていた。あれこれと要らないおせっかいをすることを指す言葉なのだが、昔話し言葉として聞いたとき「セーマー」はどういう意味なんだろうと思っていた。 なんと意味は不明だった。そうなのか。
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