団地の給水塔大図鑑 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「団地の給水塔大図鑑」という本を借りた。 北海道から沖縄まで、 団地を回って622基を撮影したという気合いの入った一冊。 これでけで著者を尊敬できる。 で、見てみると、ボックス型のところに、 うちのマンションの隣にある団地の給水塔が載っていた。 思わず、おーっと声を上げてしまった。 我が家のベランダの真ん前、すぐ下に見える。 何年か前に色を塗り直したが、以前の懐かしい姿が。
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一億人が中流を目指した戦後の人口増大時代。その夢の受け皿だった団地という存在も役割を果たし終わったように高齢者の終の住処イメージで捉えられているような気がします。消え逝く昭和レガシーだからこそ、失われた20年以降の世代には新鮮に映っているようで(レトロタウンの立ち飲みや町中華みた...
一億人が中流を目指した戦後の人口増大時代。その夢の受け皿だった団地という存在も役割を果たし終わったように高齢者の終の住処イメージで捉えられているような気がします。消え逝く昭和レガシーだからこそ、失われた20年以降の世代には新鮮に映っているようで(レトロタウンの立ち飲みや町中華みたいに…)団地モノの出版物に時々出合います。本書はさらに、マニアックにその団地の付随物、給水塔のコレクション。70年の大阪万博の跡地の太陽の塔が「つわものどもが夢の跡」のシンボルになっているように、ここに収集されている「用の美」からちょっとはみ出したオブジェたちも高度経済成長時代のシンボルとして残るのでしょうか?いやいや、筆者がこの奇特なコレクションに乗り出した10年の間にもどんどん解体されていって、本書こそが奇跡的なレッドデータブックになっています。自分も見ていた給水塔も登場し、子供の声が響いていた時代への懐かしさに胸がキュンとします。また筆者の『ただでさえ寂しい印象を与えがちな給水塔を必要以上に寂しく見せず、見た人に少しでもいい印象を持ってもらうため「晴天の順光で撮影する」という条件を自分に課している…』というように対象物への愛情が満ち溢れています。写真のキャプションも気が利いているし。一見ムダな情熱(いや、マジにムダな誠実さ)が消え逝くものを、歴史にしました。
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