ユリイカ 詩と批評(2018年9月号) の商品レビュー
(01) 2018年時点の濱口竜介監督の最新作「寝ても覚めても」までを様々な評者や関係者がテキストを寄せている. 前半は主に「寝ても覚めても」が話題となり,後半は「ハッピーアワー」とそれ以前の監督作品たちにスポットが当てられている. インディーズあるいは批評から始まった濱口氏のキ...
(01) 2018年時点の濱口竜介監督の最新作「寝ても覚めても」までを様々な評者や関係者がテキストを寄せている. 前半は主に「寝ても覚めても」が話題となり,後半は「ハッピーアワー」とそれ以前の監督作品たちにスポットが当てられている. インディーズあるいは批評から始まった濱口氏のキャリアは華々しいものだったのだろうか.それよりも,模索や,長谷正人氏が論じているように実験的な手探りが前面に感じられる.商業映画なのか文化映画なのかという類別そのものも無化するような強く静かなパッションを映像からは感じる. その着実な映像は,本誌にあるよう,声や音,演技,身体といった問題系へのアプローチに根拠づけられている.ルノワールやカサヴェテスの方法論の試みには,俳優と監督との,つまりは撮られるものと撮るものの関係が映されているが,濱口氏の篤実な切り口と継続が,そのパッションとエモーションの強い映像を生み出しているというのは,考えてみれば驚異でもあるだろう. 人間が表現をすること,それを映像に定着させること,それを持続的に観客に催すこと,これらの生と技術のありようが今後も,濱口氏の関わる映像とテキストでは,更新され続けるに違いない.
Posted by
- 1