恐怖を知らない人たち の商品レビュー
面白い本で、しかも読みやすかった。サイコパス的な特徴を持つ子供の脳では怯えた人の顔を見た時の扁桃体の働きが鈍い、という研究の話から、ではサイコパスの対極とも言える非常に利他的な人(見ず知らずの人に自分の腎臓を寄付した人々をサンプルに)の脳では何が起きているのかという研究に話が展開...
面白い本で、しかも読みやすかった。サイコパス的な特徴を持つ子供の脳では怯えた人の顔を見た時の扁桃体の働きが鈍い、という研究の話から、ではサイコパスの対極とも言える非常に利他的な人(見ず知らずの人に自分の腎臓を寄付した人々をサンプルに)の脳では何が起きているのかという研究に話が展開していき、ヒトという哺乳類の脳でどのように利他的行動のスイッチが入るのかという分析がなされる。 面白かったのは、身を挺して他人を助けるような利他的な人々が「怖れ知らずではない」という話だった(引用:恐れないということと、勇敢であるということの間には決定的な違いがある)。 ある夜高速道路で助けてくれた名も知らぬ「ヒーロー」が、著者がこの研究のきっかけになったそう。こういった、個人的な感情の話が入るのも面白く読めた要因のひとつだった。 あと、サイコパス的特徴を持つ子供の調査をしていたときに現れた少年、ダニエルのことも忘れたくない。銃を撃ったり撃たれたりするし、麻薬の取引もするいかつい彼は、ただ環境に恵まれていなかっただけで、やわらかい心を持っていた。 (って書くとサイコパス傾向が悪いことみたいだけれど、社会との間に軋轢が生まれがちなだけで生まれつきの体質なので、将来的には社会側から何とかできるようになるのではと期待しております。)
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科学関連の本を読んでいて「謝辞」にじわっときたのは初めてだろう。著者は常に初心を忘れない。心理学の実験により、サイコパスとは何か、利他主義とは何かを追求していく。専門用語も多いが、読者を排除する感がなく読みやすい。昨今の個人主義に疲れたら、読んでみると案外希望となるかも。
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恐怖を感じないサイコパスと、それを感じやすい利他的な人間とを比較対照した一冊。 自身や他人の恐怖を感じ取るのは脳のどこが司り、周りにどのように影響するのか。 著者による研究が真相を突き止めています。 重複した内容が目立ちますが、成果に感動しました。
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“サイコパス”と言われる人たちのことが書かれているのかと思いましたが、その対極にある並外れて“利他的な人々”のことを書きたかったのだと途中で気付きました。 サイコパスになる可能性のある子達は一様に“怯えた表情”を認識することが出来ませんでした。 反対に、我が身の危険を顧みず他人を助けるような並外れて利他的な人は、その“怯えた”表情を認識する能力が高かったそうです。 他人の恐怖を理解することが出来ない人がいるということに、あらためてショックを受けました。 怖い、怯える、ということがどういうことかわからないわからないから、やってしまう。そういうことなのかもしれません。 怯えた表情を認識するのは脳の偏桃体なのだそうです。 そこが先天的か後天的に異常があって認識するのに支障があるそうです。 そして反対に並外れて利他的な人は他人が怯えている、困っている、そんな表情を受け取る力が強いのでしょうね。ある意味、バランスがとれているというか、いろいろな人がいるから人類が生き延びているのかも等、とても勉強になりました。 とても興味深い本でした。
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利他的であることを研究するために、正反対のサイコパスと無償で赤の他人に腎臓移植するドナーとして体をささげた人の脳画像を撮像し、その結果から人はどうしたら善人として生きられるか?を啓蒙する本です。サイコパスは恐怖を感じる感度および扁桃体が障害されており、利他的な人は恐怖を感じる感度および扁桃体の活動が強いというシンプルな結果です。個人的には主張が強い本は、綺麗すぎる結果が示されることが多く、そのまま信じていいのか少し気にかかりました。発達性の扁桃体機能障害をきたす疾患として紹介されたウルバッハ・ヴィーテ病の患者が恐怖表情が分からないのに、なぜサイコパスにならないのかなど、まだ解明されたとは言い難いような気もしました。
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