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甲子園という病 の商品レビュー

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12件のお客様レビュー

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2018/09/29

元々阪神ファンなので甲子園に興味はあるのですが、それ以上に、虐待というイメージを持っている高校野球への関心が、読むきっかけになりました。P86 態度や行動は人の心を変える。マウンドや普段の生活でもやることを一定にさせていくと、気持ちも一定になっていく。人としての姿勢が向上すると、...

元々阪神ファンなので甲子園に興味はあるのですが、それ以上に、虐待というイメージを持っている高校野球への関心が、読むきっかけになりました。P86 態度や行動は人の心を変える。マウンドや普段の生活でもやることを一定にさせていくと、気持ちも一定になっていく。人としての姿勢が向上すると、成長が伴う。P96 日本では指導に対する機軸が無いので、指導者は、経験論でしか語ることができない。それが、プロ野球の監督を指導未経験の人物が勤めることや怒号・罵声を響かせる少年野球の指導環境へとつながっているのではないか。P134 元阪神のマートン「一つのことに集中する日本人は、野球の練習を8時間することもある。 半面、人生において大切な教育がおろそかではないか。スポーツだけを続け、20代後半から30代でやめたら、どうやって生きていくのか、ぼくも野球を終えた後の人生でやりたいことが沢山ある。少し残っている単位をとるために、また、大学へ戻って勉強をしたい。残りの人生を豊かにしたい。」P137 甲子園出場やプロ野球に入りたいという夢を持つことは大切だが、実際にプロになれる選手は限られているし、プロに勧めたとしてもいつかは引退する。野球を取っ払った時に何ができるか、育るための目標を失ってはいけない。将来、人生の勝利者になれるか?いかに社会に出てから仕事をちゃんとやって幸せな人生を送るか。今の勝ち負けではなく、生涯賃金が大切。P140 工業高校の資格取得は簡単ではない。1つ取れば、それが成功体験になって、勉強するようになる。P143 甲子園という目標と将来の生き方の両方追うと、人としての幅が広がる。野球しかやっていなければ、野球がダメなら全部だめ。全体の生き方を考えながらやっているからこそ、周りを見る目が生まれる、工支援という役割。P144 甲子園へ行くことはできた、その代償として仕事も何もできない人間になった、では何のために高校へ通わせたか分からない。P181 野球で頑張る力のある選手は、勉強や日常生活など他のことでも同じような成果を挙げられるし、勉強をやり遂げる集中力を持った子は、運動をやらせればある程度のレベルには行くのではないか。人間の能力には、それくらいの幅と対応力があるはずだが、「甲子園に行かせたい」「有名な大学に行かせたい」と大人の都合によって可能性を狭めているのが、今の教育の現状になっているように思える。

Posted byブクログ

2018/09/26

もっとも暑い季節に、 もっとも暑い月に、 もっとも暑い場所で、 もっとも暑い時間に、 行われる全国高校野球選手権大会。 夏の高校野球開催中の放映される「熱闘甲子園」。 そこに描かれるのは「勝敗」を超えたところにある、 仲間との友情、控えで終わった3年間、怪我で裏方に 回り仲間を...

もっとも暑い季節に、 もっとも暑い月に、 もっとも暑い場所で、 もっとも暑い時間に、 行われる全国高校野球選手権大会。 夏の高校野球開催中の放映される「熱闘甲子園」。 そこに描かれるのは「勝敗」を超えたところにある、 仲間との友情、控えで終わった3年間、怪我で裏方に 回り仲間を支えた…と言ったものが格好のネタとなる。 悲哀・明暗・陽陰、勝負の裏にあるコントラストを 情感たっぷりに「爽やかさ」という文脈ですくい上げる。 この視座はメディアに限ったものではない。高校野球 ファンしかり、今や国民感情にまで昇華していると 言っても言い過ぎではない。 夏の甲子園大会は100回を経た今も「感動」「清廉さ」 を希求し続けられる神話的な世界そのもの。 甲子園が「聖地」と言われる所以はこれなのか…と、 思えば妙に納得も行く。 著者は15年にわたる取材を通じて得た美談溢れる 感動の裏にある高校野球の「勝利至上主義」の名の下に 漂着した「不都合な真実」ー炎天下での開催・肩や肘を 壊しても連投させる酷使・絶対服従を前提にした 長時間練習・野球留学等ーをつまびらかにしていく。 結びとして、これまでの高校野球の現場で日常的に 行われてきた常軌を逸した様々なことが総括される ことを望むと著者は綴る。 確かにそうではあるが、その一方で、その過酷な練習 と理不尽な環境を生き抜いた屈強なプレイヤーは、 プロ野球レベルのスキルを持ち備え、甲子園で 目覚ましい活躍ができればプロ野球入りが確かなものと なり、そのレベルが超高校級ともなれぱMLBのスカウト まで大挙して押し寄せるオーディションの場でもある。 僕はこうした事実と現実を主催者の朝日新聞社はどう 見ているのかと思う。社会正義を自認し厳しく筆誅を 下してきた朝日新聞が称揚するのはあくまでも涙を 誘うドラマであり、教育の一環としての高校野球。 このアンビバレンツな現象そのものが今の甲子園大会 の置かれた状況を端的に表してるように思う。 甲子園という病は罪深く、その病巣は根深い。

Posted byブクログ