寄附金・交際費 の商品レビュー
本書では、寄附金と交際費について、法人税に関する実務において問題になりやすい項目、問違えやすい項目、判新に迷う項目を中心に網羅的にQ&A方式で解説されている。金銭や物品などを贈与した場合に、それが寄附金になるのかそれとも交際費等になるのかといった判断は、個々の実態をよく検討した上...
本書では、寄附金と交際費について、法人税に関する実務において問題になりやすい項目、問違えやすい項目、判新に迷う項目を中心に網羅的にQ&A方式で解説されている。金銭や物品などを贈与した場合に、それが寄附金になるのかそれとも交際費等になるのかといった判断は、個々の実態をよく検討した上で判定する必要がある。また、寄附金は支出の相手先や態様等によって課税関係が変わってくる。さらに、実務上、交際費と寄附金の区分以外に、 給与及び福利厚生費、広告宣伝費、販売促進費等の隣接費用との区分についても慎重な判断が必要となる。裁決・判例などで問題となった事項を取り上げて解説されており、知識の整理ができた。実務書として必携の部類に入る書籍だ。 P154 自社の取締役会長に対して見舞金として支払った金銭が、社会通念上相当と認められる金額を上回る部分については、役員賞与と認定されることがあります。その際の、社会通念上相当と認められる金額は、類似法人のうち見舞金規定等の福利厚生費の規定から支払状況の検討を行い、入院1回につき5万円が社会通念上相当である金額とされています(熊本地裁平成14年6月13日判決)。 P265 出向者給与の全額を出向元法人が負担することの可否 出向者給与の全額を出向元法人が負担する場合、合理的な理由がなければ寄附金に該当します。ただし、出向者が出向先法人で役員である場合と使用人である場合とで合理的な理由の有無が異なります。 役員である場合には、子会社の経営、生産、技術等の指導監督、出向先に対する投資の管理など、出向元法人の必要性に基づく業務が多いと考えられることから、出向元法人が全額を負担する合理的な理由があります。一方、使用人である場合は、役員である場合とは異なり、出向先のために業務を行った対価として給料が支給されるので、出向先法人が負担すべきと考える方が自然であり、出向元法人が全額を負担した場合には寄附金に該当します。 P303 3 裁決 資産の所属の移動としての処理を行ってもこれに相当する金額を元入金として受け入れる処理を行った場合にはみなし寄附金の規定は適用されないとした学校法人に関する裁決があります。 いわゆるみなし寄附金の場合、収益事業から公益事業への資産の支出とは、現に収益事業に属する資産を公益事業へ支出してこれにつき明確に区分経理をし、かつ、その資産がその公益法人等の本来の事業のための資金として使用されることをいうものと解されます。収益事業から公益事業へ資産を支出したとしても、直ちにその支出した資産の額に相当する金額を元入金として公益事業から収益事業へ受け入れた場合には、法人税法37条5項にいう支出にはあたらず、また、これにつき明確に区分したことにはならないため、当該収益事業から公益事業への支出額は、みなし寄附金には該当しません。 学校法人は次の会計処理を行っていました。 収益事業 : (借) 寄附金 (貸)学校法人勘定 ここで「学校法人勘定」は収益事業部門貸借対照表の「元入金」勘定と同義の勘定科目です。この仕訳は、収益事業から公益事業に寄附金を支出すると同時に、収益事業が公益事業から同額を元入金として受け入れたものであることから、公益事業に属する資産として明確に区分経理したことにならず、実質的に収益事業に属する資産を公益事業のために何ら支出していないと判断されました(国税不服審判所平成12年3月7日裁決)。
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