お嬢さん放浪記 の商品レビュー
著者の犬養道子さんは、五・一五事件で暗殺された犬養毅のお孫さんである。カソリック教徒であり、長年難民の支援活動に力を入れてこられたが、一昨年(二〇一七年)鬼籍に入った。 著者の家柄を知る読者は題名から、親の援助を受けて気ままに世界を旅する女性像を思い浮かべるかもしれないが、そのよ...
著者の犬養道子さんは、五・一五事件で暗殺された犬養毅のお孫さんである。カソリック教徒であり、長年難民の支援活動に力を入れてこられたが、一昨年(二〇一七年)鬼籍に入った。 著者の家柄を知る読者は題名から、親の援助を受けて気ままに世界を旅する女性像を思い浮かべるかもしれないが、そのような思い込みは見事に裏切られる。 舞台となっているのは、一九四〇年代後半から五〇年代にかけてのアメリカやヨーロッパ。まだ海外へ渡航すること自体が珍しかった時代に、自分の旅費は自分で稼ぎ、女性ひとりで旅をして回ったのだから、その好奇心と行動力には驚かされる。 しかも、彼女は旅行者として上っ面の欧米を見聞したのではない。その土地に暮らす市井の人々と同じ地平でものを見て、聞いているのである。ときには危険な目にも遭い、ときには人間の心の温かさに触れながら。それが読者の心を打つ。 のちに著者はキリスト教研究をライフワークとするのだが、本書にはすでにその精神が流れているという気がする。彼女にとってキリスト教は、理念ではなく、行動であり実践なのだと。
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青年期に読んだら、もっと影響を受けていたのは間違いない。小田実の「なんでも見てやろう」より10年も前に、そして女性が書いたことに驚き!
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