太陽のない街 の商品レビュー
小林多喜二と共に雑誌「戦旗」で活躍した徳永直の代表作。 1926年に勃発した共同印刷株式会社のストライキ、いわゆる"共同印刷争議"を下敷きにした作品で、東京にある日当たりの悪い貧民窟を舞台に、困窮を極めた労働者たちがどう戦ったのかが記されています。 徳永直は、...
小林多喜二と共に雑誌「戦旗」で活躍した徳永直の代表作。 1926年に勃発した共同印刷株式会社のストライキ、いわゆる"共同印刷争議"を下敷きにした作品で、東京にある日当たりの悪い貧民窟を舞台に、困窮を極めた労働者たちがどう戦ったのかが記されています。 徳永直は、自身が共同印刷所(就職時には博文館印刷所)に植字工として勤務しており、共同印刷争議にも参加していました。 その経験を元にしており、本作は「蟹工船」とならんで、プロレタリア文学の代表作として上げられることが多いです。 なお、小林多喜二は、高等警察にマークされ、その後、獄中にて虐殺されましたが、徳永直は後にプロレタリア作家からは脱却します。 一般的な作品を書き、本作「太陽のない街」についても自ら絶版としましたが、一方で、「はたらく一家」を代表する労働者にスポットをあてた作品を書き続け、また小林多喜二の作品の保管者として、後の世で伏せ字なしの完全版の刊行に貢献しました。 プロレタリア作家として体制と断固として戦い続けるような反骨心は無いものの、低賃金労働者のため生涯かけて戦い続けるという一つのモデルとして確立した人物であると思います。 特定の主人公は設定されていないですが、話の中心人物として「春木高枝」と妹の「加世」がいます。 本作を読む上では、この2人を追うのがわかりやすいかと思います。 高枝と加世は、病床の父と共に"太陽のない街"の長屋にすんでいます。 この街に住む人々の多くは「大同印刷会社」の従業員で、高枝と加世、その父も、この印刷会社の世話になっています。 父は印刷会社に深い恩を感じているのですが、高枝と加世は、その時代錯誤な勤労条件を疎み、組合運動を行っています。 会社の出した従業員の大規模な首切りが起因となり、大争議に発展した組合運動の顛末を書いた作品で、このストライキは失敗することが運命づけられています。 自分可愛さによる仲間内の裏切りと、汚い謀略により、雄叫びの中幕が下ります。 小林多喜二の作品も悲惨なものでしたが、本作で書かれている資本家のバッシングも相当なもので、書かれた当時は反響を読んだんだろうなと思いました。 小林多喜二の「蟹工船」や「一九二八・三・十五」のような綿密な拷問描写こそなかったですが、カフェで会話中突然リンチにあう、突然引っ張られ拘置されるなど、非人道的なシーンが散見され衝撃を受けました。 ちなみに小説としてはかなり読みにくかったです。 言葉遣いが現代と異なるからという意味ではなく、単純に書き方がこなれていない感じがしました。 プロレタリア作品でなければおそらくこれほど著名にはなっていなかったんだろうなと思います。 登場人物の動きがわかりにくく、ストライキを受けた会社の動きや組合の活動がちょくちょく入ります。 春木高枝と加世という、中心となる人物はいるのですが、少し出て動いてはまた長期間いなくなり、気づいたら登場してまた長期間登場しなくなります。 つらつらと読んでいましたが、話がわからなくなることも多々あり、度々読み返しました。 プロレタリア作品の代表作ということで読んでみましたが、普段本を読まない人にはおすすめできないです。
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実際にあった印刷会社の労働争議をモデルにした作品。 初めてプロレタリア文学を読んだ。 現代の感覚で読むと、なぜこれで絶版宣言したり取締の対象になるのかが分からない。作品として面白く、舞台化されているのも頷ける。
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180804 中央図書館 懐かしいですね。今の労働組合のヒトには、これと、『絹と明察』くらいを読んでもらおうか。
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歴史の教科書でおなじみの小説。 プロレタリア文学、という文学史的な紐づけを超える何かがあるのかという興味をもって手に取ったが、あくまで私基準では、それは見つからなかった。 関東大震災から3年後、治安維持法の施行の翌年に起きた、共同印刷による労働者解雇に端を発した争議をテーマに...
歴史の教科書でおなじみの小説。 プロレタリア文学、という文学史的な紐づけを超える何かがあるのかという興味をもって手に取ったが、あくまで私基準では、それは見つからなかった。 関東大震災から3年後、治安維持法の施行の翌年に起きた、共同印刷による労働者解雇に端を発した争議をテーマにした小説。 時代背景の違うものに対して、このように評するのは的外れではあるが、紙芝居的。作者による後書によれば、普段小説を読まない労働者に訴えるために気を配った、とのことである。
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