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わたしだけのアイリス の商品レビュー

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2020/10/09

なんて色彩の美しい物語だろうという感想が 1番最初に浮かびました。 白いページに黒い文字で綴られている ごく普通の本。 カバーはグレーと白のデザインに黒字のタイトル。 物理的な本としてカラフルさとはかけ離れている。 なのに、馴染みのない日常では使わない色の名前が まるで見たことが...

なんて色彩の美しい物語だろうという感想が 1番最初に浮かびました。 白いページに黒い文字で綴られている ごく普通の本。 カバーはグレーと白のデザインに黒字のタイトル。 物理的な本としてカラフルさとはかけ離れている。 なのに、馴染みのない日常では使わない色の名前が まるで見たことがあるかのように 情景と共に目の前に映し出されました。 また、普段自分が見ている世界の色は もっとカラフルなはずなのに 日常に忙殺されてしまっている、と ふと、気付かされました。 カラフルなもの、モノクロなもの、くすんだもの 全ての色をもっと楽しみたいと感じました。

Posted byブクログ

2018/09/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

初めて読む作家、とても良かった。久しぶりに二度読みした。 作者は遠藤周作氏に影響され、天草という堅実な信仰をもった人々が住む場所を舞台に静謐な物語を書きたかったと後書きにある。 ページを捲るのが楽しい。絵画、写真、食べ物、イタリア、そして美しく暖かな天草の風景、自分の感性に触れるものが詰まった本。 主人公の海咲は、才能溢れる「色彩のディーバ」と呼ばれるフォトグラファー。故郷や、家族、全ての過去をたち切って生きていた彼女には、写真だけが全てだった。しかし、先天性の色覚障害の発症により、仕事、地位、名声、恋人、すべてを失う。 絶望という深い海に落ちた海咲は、熊本の震災をきっかけに故郷に帰る。美しい風景と、捨てたと思っていた家族、故郷の人々、同級生の晶太郎、そして「たまには自分の立っている場所をしげしげと見つめみるのも、悪くなか」という恩師の言葉が、海咲を新しい道へ導く。 ゴッホは、自分が見えるモノを、心の目で感じ、キャンバスに描いていた、「星明りの夜」の紫は、紺色に。「セントポール病院の麦畑」のオレンジは黄金色に。「本当に美しかもんは、眼でみるもんとは限らん、心で見るものです」という恩師の言葉は、海咲の眼に新しい色を示し、自分にしかない個性として感じさせることになる。ゴッホが色覚異常だっという話は知っていたが、人の代償能力の凄さ、素晴らしさに驚いた。本当に「静謐さ」を心に落とす物語だった。

Posted byブクログ