火影に咲く の商品レビュー
いい話。昔から、こういう話は、あまたあるものの、いつまでもいものはいい。作者の目線は、優しい。最後の半次郎の話は、泣けた。
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幕末の短編集。新選組や坂本龍馬など有名な人物がたくさん。作品ごとに語り手、立場が変わり、壬生浪と蔑まれた野暮ったい新選組が他の作品では一転していきいきと活躍している等、敵味方・善悪が立場ごとにガラッと変わって見えて興味深い。
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天下国家を論じ、人を斬ることが日常茶飯事のような幕末の世、戦わずして返上させるのか、幕府を討って滅するのか。徳川を残すか、廃するか。国を思い命を賭ける男たち、そんな男と同様に国の行く末を案じる女性、そんな男たちに寄り添う女性。木内昇が幕末の男女にしっとりとした切り口で仄かな光を投じます。読み応えがあります。「火影に咲く」、2018.6発行。紅蘭、薄ら陽、呑龍、春疾風、徒花、光華の6話。春疾風の君尾と高杉晋作、徒花の岡本健三郎とタカ、光華の中村半次郎とおさと、男の思いと女の思い、すれ違ったか絡んだか・・・。
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随分と時間をかけてしまいました。 幕末の志士と女性たちの恋物語。 ですが、まったく色恋が関わらない沖田総司と女郎上がりの老女の話に胸を打たれました。 好きだ、大事と言いながら、戦に走っていく男達。知っていて、わかったいて、そんな男を見送る女。私ならどちらになるのだろうと、しばし、そんな気持ちになる切ない物語ばかりでしたね。
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幕末の志士たちの短編集。 名を知ってる人も知らない人も。どの話も何だか切なく、ほろ苦さが残る。 特に最後の中村半次郎は胸が苦しい。 何とかならんのか?今の時代なら全く問題ないただの睦まじい恋愛で済むのに。
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幕末時代の短編です。恋愛ものが多いです。 幕末志士は元々好きだし、どの話もほのかに切なくて悲しくて心のすれ違いみたいなのが多くて本当に好きでした。 特に中村半次郎の話が好きだった。やっぱり木内昇先生の書く幕末って大好きだなーー
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流石です。 幕末の京都を舞台にした6つの短編からなる歴史小説ですが主題は人間像。 時代を駆け抜けた男たち、梁川星巌、吉田稔麿、沖田総司、高杉晋作、坂本龍馬、中村半次郎。 彼らの傍らに様々な女性を置き、それによって見事な人物像を描き出しています。 全体にあっさりしてます。ガチガチと...
流石です。 幕末の京都を舞台にした6つの短編からなる歴史小説ですが主題は人間像。 時代を駆け抜けた男たち、梁川星巌、吉田稔麿、沖田総司、高杉晋作、坂本龍馬、中村半次郎。 彼らの傍らに様々な女性を置き、それによって見事な人物像を描き出しています。 全体にあっさりしてます。ガチガチと書き込まれていません。単純な恋愛ものでは無いですし、時代の切迫感・緊張感も弱いと感じられるかもしれません。 でもそれが狙いなのだと思います。男たちの日常の一場面をサラリとスケッチして見せる。しかしそこから浮かび上がる彼らの姿はとても生き生きと鮮やかなのです。
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わしはせいぜいおなごのひとりに選ばれるだけの器か…京一との噂の町娘を我が物とし有頂天の土佐藩下士岡本健三郎はかつて大うつけと見下していた坂本龍馬の国をも動かす傑物振りを目の当たりにし自己嫌悪に陥る。 そして暗殺現場から間一髪で命拾いをしても「どうせ俺なんか」の想いは募るばかりに不...
わしはせいぜいおなごのひとりに選ばれるだけの器か…京一との噂の町娘を我が物とし有頂天の土佐藩下士岡本健三郎はかつて大うつけと見下していた坂本龍馬の国をも動かす傑物振りを目の当たりにし自己嫌悪に陥る。 そして暗殺現場から間一髪で命拾いをしても「どうせ俺なんか」の想いは募るばかりに不貞腐れる。 咲くも誇れず実も結べぬ徒花の如き男心の懊悩を女流乍らここまで見事に炙り出されるとまるで己の事を言われているようで胸の奥がチクリと痛む。 上質な六つの短編、影に徹し名もなき花をひたむきに描き続けて来た木内さんの文学が今鮮やかな火になる
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幕末の有名な志士たちが出てくる話だがさほど派手さはない。日常の話も交えて登場人物の人間味が感じられる短編集だった。そしてよく描かれる事件も視点を変えるとこんな風に見えるんだなと興味深くも読めた。どうしても激動の時代なので大きな事柄が動く話が多い中、幕末を生きる、生きていかなければ...
幕末の有名な志士たちが出てくる話だがさほど派手さはない。日常の話も交えて登場人物の人間味が感じられる短編集だった。そしてよく描かれる事件も視点を変えるとこんな風に見えるんだなと興味深くも読めた。どうしても激動の時代なので大きな事柄が動く話が多い中、幕末を生きる、生きていかなければならない人たちの切なさや虚しさを短い話で見せる作者の上手さが光る作品だと思う。
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「光芒の人」「笑い三年、泣き八年」「球道恋々」…今まで読んで来て、木内昇の描く人間はいつも時代の流れの波間に見えるか見えないかの泡のような存在ばかりです。だけどその小さな人生に向ける眼差しの優しさにいつも胸苦しくなります。今回は大政奉還150周年のタイミングで、幕末泡沫人生の短編...
「光芒の人」「笑い三年、泣き八年」「球道恋々」…今まで読んで来て、木内昇の描く人間はいつも時代の流れの波間に見えるか見えないかの泡のような存在ばかりです。だけどその小さな人生に向ける眼差しの優しさにいつも胸苦しくなります。今回は大政奉還150周年のタイミングで、幕末泡沫人生の短編連作です。「紅蓮」の簗川星巌(この人初見ですが)「薄ら陽」の久坂玄瑞、「春疾風」の高杉晋作、「徒花」の坂本龍馬が時代に名を残すヒーローが時代を超えて存在感を焦げ付かせる「火」だとしたら、その影には「火」に翻弄される人生が無数にあるのでありました。簗川紅蓮、吉田稔麿、沖田総司(ちょっと有名すぎるけど…)、君尾、岡本健三郎、中村半次郎(この人も知ってた…)。彼らはただ巻き込まれるだけではなく、自分なりに燃え盛ろうとするのですが、目の前の大きな炎に呑み込まれたり、燃えきれず燻ったり。題名の「火影に咲く」はヒーロー達の大輪の花ではなく、その周りの小さな花々の懸命に咲こうとする姿を意味していると、読後に理解しました。また、小さな炎の周りには、小川亭のてい、お布来さん、亀田屋のタカ、村田煙管店のとさと、恋の炎、誇りの炎を燃やしている女たちの人生も咲きまくっているのでありました。NHK「西郷どん」は大河テレビ小説ですが、この本は大河に流れ込む支流小説なのだと思いました。支流の見つけ方、描き方、木内昇、うまい!
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