ミレニアム・ピープル の商品レビュー
イギリスの作家「J・G・バラード」の長篇SF作品『ミレニアム・ピープル(『千年紀の民』改題・文庫化)(原題:Millennium People)』を読みました。 「ジョン・ウィンダム」の『トリフィド時代 【新訳版】 食人植物の恐怖』に続きイギリス作家のSF作品です。 ----...
イギリスの作家「J・G・バラード」の長篇SF作品『ミレニアム・ピープル(『千年紀の民』改題・文庫化)(原題:Millennium People)』を読みました。 「ジョン・ウィンダム」の『トリフィド時代 【新訳版】 食人植物の恐怖』に続きイギリス作家のSF作品です。 -----story------------- 首謀者不明のうえ犯行声明もなかったヒースロー空港の爆破テロに巻き込まれ、精神科医「デーヴィッド」の前妻「ローラ」は無意味な死を遂げた。 「デーヴィッド」はテロの首謀者を突き止めようと試みる中で、医師「グールド」が主導する、高級住宅街チェルシー・マリーナの住民による目的なき革命計画の存在を知る。 20世紀SF最後の巨人「バラード」による黙示録的傑作。 (単行本『千年紀の民』改題・文庫化) ----------------------- ヒースロー空港で発生した爆破テロ… 精神分析医「デーヴィッド・マーカム」はテレビ越しに、事件に巻き込まれて負傷した先妻「ローラ」の姿を目撃する、、、 急ぎ病院に駆けつけたが、すでに彼女の命は失われていた… その「無意味な死」に衝撃を受けて以降、「ローラ」殺害犯を捜し出すため「デーヴィッド」は様々な革命運動に潜入を試みる。 やがて組織の一員である女「ケイ・チャーチル」と出会い、すべてを操る小児科医「リチャード・グールド」とも奇妙な友情を築くが、それは中産階級者の聖地チェルシー・マリーナを実験場とした壮大な計画の始まりに過ぎなかった… 新たな千年紀(ミレニアム)を求め“革命”に熱狂する中産階級の人々の運命は。 世紀のSF作家「バラード」の到達点… 『SFが読みたい!2012年版』ベストSF2011海外篇第9位… とのことで期待して読み始めたのですが、、、 この作品の世界観に気持ちが惹かれなかったし、主人公の「デーヴィッド」の一人称で描かれるのですが、彼に共感できなかったので、残念ながら愉しめなかったですね… かなり流して読んでしまいました。 SFっぽさも、あまり感じなかったし、物足りなさだけが残る作品でした。 以下、主な登場人物です。 「デーヴィッド・マーカム」 精神分析医 「サリー」 デービッドの妻 「ローラ」 デービッドの前妻 「ヘンリー・ケンドール」 デービッドの同僚。ローラの同棲相手 「アーノルド教授」 アドラー心理学協会理事長 「リチャード・グールド」 小児科医。革命家 「ケイ・チャーチル」 映画学講師 「ヴェラ・ブラックバーン」 ケイの友人 「スティーヴン・デクスター」 チェルシー・マリーナの牧師 「ジョーン・チャン」 デクスターのガールフレンド 「タラク少佐」 内務省のテロ対策チーム所属
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テロと中産階級(といいつつ、日本的な基準で見ると富裕層)の反乱というモチーフを2003年に書いているというのが、予言的。 中産階級に対して狂騒的に反抗をあおるアジテーターの女性、ケイの言動はジョセフ・ヒース「反逆の神話」に描かれる文化左翼に近いんだが、リベラルな世界観のバックラ...
テロと中産階級(といいつつ、日本的な基準で見ると富裕層)の反乱というモチーフを2003年に書いているというのが、予言的。 中産階級に対して狂騒的に反抗をあおるアジテーターの女性、ケイの言動はジョセフ・ヒース「反逆の神話」に描かれる文化左翼に近いんだが、リベラルな世界観のバックラッシュという意味で、トランプ現象も連想させられる。 ただ、このお話の本質は中産階級の反乱ではなく、暴力に人々が感染し、世界の無意味性がむき出しになっていくという事なんだろうなあ。特に、世界が無意味であることへの気づきが、ある種の人には救いになるという逆説がおもしろい。 不勉強でよくわからないのだが、小児科医グルードの話はアナーキズムと関係あるのではないだろうか。あと、アドラー心理学を知っていたら、より深く読めた気がする。 J・G・バラードの本ははじめてだったが、白昼夢のような筆致にひきこまれ、ぐいぐいと読み進めてしまった。
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精神科医のデーヴィットがヒースロー空港で起きた爆破テロ事件に巻き込まれる。自身と妻は無事であったが、被害者の中に前妻がいたことを後に知る。なぜ前妻は犠牲になってしまったのか。デーヴィットは事件の背景を探り、真実を見つけるために奔走する・・・ 読み進めていて、どうも腑に落ち...
精神科医のデーヴィットがヒースロー空港で起きた爆破テロ事件に巻き込まれる。自身と妻は無事であったが、被害者の中に前妻がいたことを後に知る。なぜ前妻は犠牲になってしまったのか。デーヴィットは事件の背景を探り、真実を見つけるために奔走する・・・ 読み進めていて、どうも腑に落ちないことが多くて、物語に没入できなかった。 人がなにか行動を起こすときに、とくに反社会的行動を起こすときには、たぶん強烈な動機がいると思う。強力なリーダーシップをとるカリスマ的な人物が先導して、ある程度、その運動が大きくなれば、祭りに乗り遅れるな、とばかりに大した動機が無くても乗せられて浮かれる人たちも出てくると思うが、それにしたって、たぶんそこに一歩踏み出すには何かしらの大義名分があるはずだ。 一昔前に流行った「踊る大捜査線」の映画2作目でリーダーのいない犯罪者グループが登場して、縦割り型官僚組織を批判したことがあった。その時も、こんな犯罪組織ありえないでしょ?って自分は感じてしまった。この作品の読後感も同じ。 しかもこの作品で革命の主体となっているのは階層でいうと中流階級の人たちで、反体制の行動として、ささいな抵抗を繰り返す。例えば万引きするとか。ある程度の教育を受けた人たちの間に、こんな子供じみた反抗が広がっていくわけがない。と思う。 暴動を起こすことはできると思う。でも暴動と革命は違うし。 暴動に乗じて、革命を起こすグループは出てくることは十分あり得ることだが、暴動を起こした人たちは捨て駒であって、革命の主体にはなり得ない。 最初から架空の設定で書いてくれていたら、先入観もなく楽しかったんだろうけど、なまじ現実っぽい書き方なので、楽しくなかった。 どうも自分にはSFを楽しむ素養がないようだ。
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『千年紀の民』の改題文庫化。 帯文が内容にピッタリだった。確かにこういうのってある種の娯楽なのかもしれないな〜。
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