初歩からの化学 の商品レビュー
一応化学で飯を食っている立場の人間ではありますが、学生時代の専門ではなく体系的な知識が欠けている自覚があり本書を読み通しました。本書はおそらく大学で学ぶ化学の入門くらいのレベルを意図した書籍だと思います。 本書は身近な話題から化学に入門するタイプの書籍ではなく、学問としての化...
一応化学で飯を食っている立場の人間ではありますが、学生時代の専門ではなく体系的な知識が欠けている自覚があり本書を読み通しました。本書はおそらく大学で学ぶ化学の入門くらいのレベルを意図した書籍だと思います。 本書は身近な話題から化学に入門するタイプの書籍ではなく、学問としての化学の入門に徹した硬派なテキストです。主に物理化学の入門的内容と有機化学のさわりが記載されていますが、2/3くらいは量子化学や熱力学の説明であり実質は物理化学の入門書です。内容も数学・物理をなるべく避けながら、入門書としてはかなり高度なことまで記載されてています。数値例や身近な物質の話題も多く、具体的な物質を扱う化学の良さを感じ取ることができると思います。また本書はところどころに掲載されている表がよく作られていて参考になるものが多く、個人的にはp.80の表5.1とp.232の表14.3が知識のよい整理になり有難かったです。 ただし本書は、やや説明が不足していて初めて大学の化学を学ぶ学生にはわかりづらいと思われる記載も散見されます。特に量子化学の説明では、説明しようとしていることの高度さに比して波動関数や軌道の説明がやや直観的であっさりしており、概要を掴むにも若干つかみ切れないのではないかと感じます。全微分を急に実行しているのもやや不親切と感じます。また、無機化学や高分子化学の説明がほぼないことも少し物足りなく感じます。 ※放送大学の授業のテキストとして使用しましたが、本感想は授業とは独立した書籍のみに対するものです。
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