オールドレンズの神のもとで の商品レビュー
「オールドレンズの神のもとで」(堀江敏幸)を読んだ。 短編集。 ハッとするほど端正でシュッとした文章である。 この中の物語の一つひとつにほのかなともしびが揺めきささくれ立った心を鎮めてくれる。 唯一(表題作でもある)「オールドレンズの神のもとで」は筆者の深い悲しみと燃え立つ...
「オールドレンズの神のもとで」(堀江敏幸)を読んだ。 短編集。 ハッとするほど端正でシュッとした文章である。 この中の物語の一つひとつにほのかなともしびが揺めきささくれ立った心を鎮めてくれる。 唯一(表題作でもある)「オールドレンズの神のもとで」は筆者の深い悲しみと燃え立つ怒りとそうして強い覚悟が込められている。 かつてJ・G・バラード(イギリスのSF作家)がこんなことを書いている。『不思議なことに、完璧な短編小説はいくつもあるが、完璧な長編小説などというものはないのだ。』(柳下毅一郎 訳)。 この短編集を読んでいると《あぁ確かにそうかもしれない》なんて思う。
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読書メーターvinvinさんメモ ①窓(8P)毛虫にお腹数か所痒みで皮膚科女医は幼馴染 ②樫の木の向こう側(8P)研修所管理人七本樫さんを加奈子は久しぶり訪問 ③杏村から(2P)杏ジャムを誕生日翌日に ④果樹園(51P)交通事故リハビリ兼ね犬(オクラとレタス)の散歩バイトきっかけ...
読書メーターvinvinさんメモ ①窓(8P)毛虫にお腹数か所痒みで皮膚科女医は幼馴染 ②樫の木の向こう側(8P)研修所管理人七本樫さんを加奈子は久しぶり訪問 ③杏村から(2P)杏ジャムを誕生日翌日に ④果樹園(51P)交通事故リハビリ兼ね犬(オクラとレタス)の散歩バイトきっかけはちらし ⑤リカーショップの夢(4P)不動産屋で教わった合言葉をリカーショップで ⑥コルソ・プラーチド(8P) ⑦平たい船のある風景(7P) ⑧黒百合のある風景(9P) ⑨柳生但馬守宗矩(14P) ⑩天女の降りる城(3P)六郎じいさん姫子ばあさんが天守閣 ⑪めぐらし屋(5P)隠れ家紹介業 ⑫徳さんのこと(17P) ⑬黒電話(6P) ⑭月の裏側(3P)幼稚園の送り迎え自転車携帯電波途切れる ⑮ハントヘン(8P) ⑯あの辺り(15P) ⑰十一月の肖像(8P) ⑱オールドレンズの神のもとで(17P)頭部に1cm四方の穴、一生に一度激頭痛で無名の記憶が臨界点、樫の木の棒で色を鎮める ☆ダヴィンチ、すばる、男の隠れ家…雑誌に載っているショートストーリー・自分でも書けそうと思っていたが、読み慣れていないと難しい・ネタを集めておくこと 筆者の好きな言葉?リノリウム/果樹園(黒百合のある光景)☆Pタイルのようなもの/ひらがなの多用(いちばん・むかし…漢字で文字間が詰まるより〇) スツールに腰かけたまま、靴底でリノリウムの床を静かに押しながら時計と反対回りにまわり、ワイシャツの裾をたくし上げて背中をなかばまでさらす。 実家近くの紳士服店の店長に転職・診療所・艶のある黒髪をひっつめた、目の大きな、当時のままの先生 言いながらカルテにかがみ込んで難しそうな文字を書きつけている彼女の横顔に、図書館の女の子の表情が重なる。ボールペンと人差し指を親指で丸め込むような持ち方は、当時のままだ。手元を見るふりをして、彼の目はしだいに、鼻筋の通った、でも少しだけ肉のついた横顔に引かれていく。個人病院なのだからそんな必要ないように思えるのだが、白衣の左胸に、むかしと同じ名字のプレートが付いていた。 診察が終わり去るとき「お大事に。もう蜂にさされないようにね」…彼女は身体ごと窓の方を向いて、彼とおなじものを眺めているようだった。 新人時代にお世話になった夫妻・奥さんの墓参に旦那さんの運転で山道へ 杏村から 誕生日の翌日にtel・杏のジャム 同僚が通勤途中に柑橘類2個を5年間もらった話・病気療養で実家へ(まだ独り身の情けない叔父さんを気づかう立派な甥っ子)・犬散歩の仕事・オクラとレタス タギング(シャッターに書かれたスプレーの落書き・渦巻) 散歩中新しい子供用靴を拾う・警察へ 姉に聞いた美容院・夏みかんの木 香りに満ちた路上の果樹園のなかをくぐって彼らのあとをたどる。☆街中にだって香り(小さな幸せ?)は溢れていることの暗示か? 大地主・リカーショップ・不動産屋から「機会があったら、店のいちばん奥の木箱に入っているチリ産のワインを買って、栓抜きも欲しいとおっしゃってください」 →広々とした地下倉庫・コルクでできた巨大な船 コルソ・プナーチド☆革製品卸商の名前? 登場人物3人ルイージ、カウロ、フィーナ…意味取れず 栴檀(せんだん)は双葉より芳し☆大成する者は幼いときから人並み外れてすぐれていることの喩え・妻実家近くに土地購入・平屋を建設・都会生活は単に同僚知人への見栄だったと気付く …きれいねえ。なんか屋形船みたい、と義母が言う。 …手をひろげると、薄くて真っ黒な傘の袋が、黒百合の花弁のように、ふわりと開いた。☆黒い百合なんてあるのか?花から悪臭skunk lily(スカンクユリ)outhouse lily(便所ユリ)irty diaper(汚いオムツ)英語の別名 高校の先生(腕には真剣で切られたような筋)・クラス一番の親分肌生徒が交通事故・左手首切断 天女の降りる城 六郎・姫子 めぐらし屋 隠れ家の紹介業? 徳さんのこと 未亡人の元夫の弟・遠い親戚・高校時代に下宿・志望大学合格時に細身の時計をプレゼントしてくれた 黒電話 孫へのプレゼント 月の裏側 携帯の電波が届かない大型マンションに挟まれた裏道 ハントヘン 15歳の少年・40年前に訪ねてきた少年 あの辺り 墓原(はかはら)・鉄道工事・幽霊列車 十一月の肖像 歯科医院・絵画の修復士☆冷静と情熱のあいだの順正 P177私はリノリウムの床に小さな荷を立て、倒れないように押さえながら梱包用の透明なテープを慎重にはがし、エアパックをすべて取り除いた。 喫茶店の壁・1951年11月・夕日が当たる位置に掲額 頭部に1センチ四方の小さな正方形の孔
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栴檀は双葉より芳し(平たい船のある風景) 旋盤はニ刃より芳し(いつか王子駅で) こういうの見つけると何となく嬉しい気分になる スタンスドットのボウリング場等、懐かしい
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自分にとってはアウェイな本を数冊読んだので、積ん読になっていたホームの本を読み始めました。 堀江敏幸 好きなんですよね。なんというかなんにも起こらないような日常の細やかな風景と空気の小説。 全部で18篇 新聞や雑誌に掲載されたものを集めた本です。 短いものは2ページもない。 ...
自分にとってはアウェイな本を数冊読んだので、積ん読になっていたホームの本を読み始めました。 堀江敏幸 好きなんですよね。なんというかなんにも起こらないような日常の細やかな風景と空気の小説。 全部で18篇 新聞や雑誌に掲載されたものを集めた本です。 短いものは2ページもない。 そして装丁がいつも美しい。 白い紙そのものを活かした白い本にシンプルに文字だけ。 帯はシックな紫鼠を少し淡くしたような色 本棚に並べてても静かに存在感を出しています。
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書評で読んでみた。短めの話は企業とコラボのショートショートみたいなあっさりめ。平屋の話は好きだな。そんな家ちょっと憧れる。タイトルの話はなんか怖い。
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2005年から2017年の間に書かれた、掲載誌も長さもバラバラな18の短篇集。 「果樹園」「コルソ・プラーチド」「ハントヘン」「あの辺り」「十一月の肖像」が好みだった。 堀江先生にしてはフランスがあまり出て来なかったり幻想小説のようなものもあり珍しい。 表題作はキーワードにな...
2005年から2017年の間に書かれた、掲載誌も長さもバラバラな18の短篇集。 「果樹園」「コルソ・プラーチド」「ハントヘン」「あの辺り」「十一月の肖像」が好みだった。 堀江先生にしてはフランスがあまり出て来なかったり幻想小説のようなものもあり珍しい。 表題作はキーワードになりそうな単語が散りばめられているが、うまく読み解けていない。
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堀江敏幸の静謐な文体が好きだ。まるで白磁の珈琲碗のような、色気ある日本語が好きだ。表題にもなった短編は、珍しくSF要素があり、なぜか読んでいて映像が浮かんできたが、その理由は中盤で明かされる。私たち日本人が言表することを憚ってきた原爆投下のまちの話。色を失った世界、真実を覆い隠す...
堀江敏幸の静謐な文体が好きだ。まるで白磁の珈琲碗のような、色気ある日本語が好きだ。表題にもなった短編は、珍しくSF要素があり、なぜか読んでいて映像が浮かんできたが、その理由は中盤で明かされる。私たち日本人が言表することを憚ってきた原爆投下のまちの話。色を失った世界、真実を覆い隠す世界、語ることを忌避してきた世界。そして、聞こうとしてこなかった私たち。昭和も平成も終わった。だからそろそろ、ちゃんと聞こう、ちゃんと知りたい、と思った。
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書かれた年代も掲載媒体もさまざまな短編集を、寄せ集めて再構成した本。特に関連はなさそうな作品同士がⅠ〜Ⅲの章に分けられており、そして最も難関な作品(小説なのか、詩なのか、はたまた何かの暗号なのか)が本のタイトルにもなっている理由に、あれこれ想像をめぐらせてみる。
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久しぶりに堀江さんの小説を読んでやっぱりいいなぁと思う。架空の地名までが愛おしい。果樹園、柳生但馬守宗矩の話が特に好き。 この本のデザインの白さ同様、堀江さんの作品は雪が静かに降り積もっていくように穏やかな気持ちが読んでいると心に溜まってていく。
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堀江さんの文章は決して柔らかくないのに、曇りの日のように白いイメージ。具体的なものが書いてあるのに、頭の中に浮かぶイメージがいつも白い風景。 短編集の体だけれど、私の中ではほ詩集の印象で読んだ。具体的な場面が描かれているのに、自分の中の感情とか思い出が掘り起こされる。 でも、最後...
堀江さんの文章は決して柔らかくないのに、曇りの日のように白いイメージ。具体的なものが書いてあるのに、頭の中に浮かぶイメージがいつも白い風景。 短編集の体だけれど、私の中ではほ詩集の印象で読んだ。具体的な場面が描かれているのに、自分の中の感情とか思い出が掘り起こされる。 でも、最後に収録されている表題作「オールドレンズの神のもとで」は、この中の話の中で一番ファンタジーぽい作りなのに、人間の歴史の中での愚行とかこれからも繰り返されるかもしれない破壊行為とかに対する怒りや不安が具体的で、迫るものがあった。
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