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2018/10/20
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米軍基地の恩恵と不良の兄貴の影響を受けながら生活する伊織は同級生の針生と知り合う。兄に教わったマリファナをきっかけに他の友人ともバンドを組みロックに目覚めるが、伊織は針生の天性の歌声と自分の凡夫さ、そして音楽アーティストの本質を知る。 薬物といえば花村萬月の代名詞のようなものだが、本作においてもそれは顕著だった。 青少年達は薬を楽しみ、人によっては薬に溺れていく。そこだけ見れば気分は良くないが、本作ではバンドという青春ものにミックスされていて手に取りやすい内容だった。 自分の兄も、業界の大人達でさえ、針生のカリスマ性を見抜く。 自分は彼に最初にロックを教えた人間としてなんとかリードしようとするも最初はそれがうまくいかない。挙句の果てに、音楽なんていうものは所詮猿回しの芸人のようなもので、自分を含めてバンドは針生以外はいらないとさえ言われる。アウトローながらも若々しい青年の葛藤がうまく描写されていた。 針生はドラッグ以上に兄に溺れていき、先行きは暗くなるところで、主人公は猿回しもとい、観客を騙して楽しめるバンドマスターとして目覚めていく。 バンドマスターとして目覚めて以降は、社長の右腕のようなものとして活動し、他のメンバーも様々な理由でどんどん離れていく。 針生も一人カリスマアーティストとして生きるが、彼個人の目線では孤独と苦しみばかりで、最後は誰もが予想した結末で終わる。 バンド、恋愛、すれ違い、薬物、別れなど、設定だけで終わらず、非常に楽しめるストーリーだった。 大きなライブが終わった以降は情報だけをまとめた駆け足の文章がずっと続くのは残念でしたが、全体としては青春もの小説としてとても楽しめました。

Posted byブクログ