ロラン・バルトによるロラン・バルト の商品レビュー
出版社によっては『彼自身によるロラン・バルト』とも訳されている本。 1975年に刊行された作家による自伝的評論ですが、論理的な構成に沿って進み、「私」「彼」「君」と次々に自分自身を呼びかえていく様子に、自分という人物像を限りなく分析しようとする試みが見え、バルトのエクリチュール...
出版社によっては『彼自身によるロラン・バルト』とも訳されている本。 1975年に刊行された作家による自伝的評論ですが、論理的な構成に沿って進み、「私」「彼」「君」と次々に自分自身を呼びかえていく様子に、自分という人物像を限りなく分析しようとする試みが見え、バルトのエクリチュールにより自身が他者対象化された小説のようにもなっています。 幼年期の彼や、過ごした町の写真が多数掲載されていますが、内容との関係性がよくわからないものもあり、彼の遊び心が見られます。 常に模範的な理知的な人物というイメージでしたが、毎日ピアノを弾いているのに、ピアノの練習を嫌がってしないため、いつまでたってもピアノがうまくならないというようなことも「流麗な文章で」書かれており、人間味を感じます。 夜にはベッドに入り、文学的な本と推理小説を2冊読むことまで語られ、「わたしが好きなもの、好きではないもの」なども語られ、『枕草子』のよう。 グレン・グールドが好きでアルトゥール・ルービンシュタインは好きではないのだとか。 ジッドのエクリチュールへの憧れとバタイユの不安感への共感も語られます。 本人が語る内容は、ファンにはたまらないご褒美といったところ。 分厚く難解なところも多々ありますが、単なる自己エッセイではない、バルトのエクリチュールを学ぶ上でも意味深い一冊です。
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