庄野潤三ノート の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
庄野が誰かを長くそして深く語る本はあったけれど、庄野がこんなふうに長く語られる本はこの本の他においてあるだろうか。これは小説ではないかもしれないが、間違いなく阪田寛夫にしか書けなかった本であろう。庄野潤三という作家の性質が各作品の解説を通じてありありと浮かび上がってくる。 庄野作品に登場する庄野潤三からだけではどうしても抑えきれない部分というものが阪田の眼によって明らかにされる。父としての姿のほかにも一作家としての苦悩や葛藤というものが丹念に掘り起こされることによって、なぜ彼が幸せな家庭というものを描くことになっていくのか、その道すじがすこし見えた気がした。 なによりも作品作りにおいて一片の妥協も許してはならないという姿をとことん見た気がする。自分にとっての理想系がどこかにあるのならそこに向かって絶えず努力をつづけなくてはならない。
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