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茶と漆のかたち の商品レビュー

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2024/10/07

 本書は裏千家系の出版社である淡交社が出した「茶道教養講座」のうちの1つである。何の変哲もないように見える茶道具が茶道の美意識の中でどのように位置づけられているのかを知りたいと思っていたところ、漆工史専門家である福島氏が書いた国立博物館のブログが面白かったので、著書を購入してみた...

 本書は裏千家系の出版社である淡交社が出した「茶道教養講座」のうちの1つである。何の変哲もないように見える茶道具が茶道の美意識の中でどのように位置づけられているのかを知りたいと思っていたところ、漆工史専門家である福島氏が書いた国立博物館のブログが面白かったので、著書を購入してみた。    漆が日本でどのように使われ、工芸として発展してきたか、大陸から入ってきた「唐物」が日本でどのように扱われ、ローカライズされてきたか、その歴史を概観している。堆朱と鎌倉彫の違いなど、技法の紹介も詳しい。  鑑賞の仕方、どこがどうして美しいのかなどについては期待していたような解説はなかった。一方で、学者たちが茶器の飾り方の指南書や贈答に関する書簡等を通じて、どう資料を読み解き、同時代の作例との比較などを通していかに漆器を分類し、基準作品を決め、茶器の時代や作者や所有者を推定しているのかという研究手法が垣間見える内容は多々含まれており、興味深かった。また、本阿弥光悦の「舟橋蒔絵硯箱」、「八橋蒔絵硯箱」についての国宝認定は光悦作という資料的な決定打がなされていないまますすめられたというのも衝撃的だった。  本書を読み、千利休、古田織部、小堀遠州の系譜などもなんとなく分かったので、三井記念美術館「茶の湯の美学」も興味深く見ることができた。本阿弥光悦展も解説をじっくり予習してから行けばよかった。前提の知識や教養がないと「茶碗が並んでいるなぁ。形は若干大き目だなぁ」で終わってしまう。見る「目」を育てたいと心から思った。  

Posted byブクログ