吉田満 戦艦大和 学徒兵の五十六年 の商品レビュー
著者は博報堂勤務を経て研究者に転じたメディア論の専門家。日銀関係者に加え、吉田が長い間コミットを続けた教会関係者への取材を重ねることで、吉田の書き手としての側面と職業生活・信仰生活との関わりをバランスよく描き出している。 宮城支店長時代の吉田を知る牧師は、吉田を「真向き」=...
著者は博報堂勤務を経て研究者に転じたメディア論の専門家。日銀関係者に加え、吉田が長い間コミットを続けた教会関係者への取材を重ねることで、吉田の書き手としての側面と職業生活・信仰生活との関わりをバランスよく描き出している。 宮城支店長時代の吉田を知る牧師は、吉田を「真向き」=戦艦大和の学徒兵としての顔、「横顔」=日銀行員としての顔、「うしろ姿」=クリスチャンとしての顔の三つを持っていた、と語ったという。「真向き」が社会生活の中心としての日銀ではなかったことがポイントなので、それだけ彼が「大和」の記憶にとらわれ、その経験を思考の起点とし続けてきたことが伝わってくる。 全体としてエピソード中心の構成で、テクストの解説や位置づけという点では物足りなさも残る。だが、それは文学研究者がなすべき仕事なのだろう。
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