猫にGPSをつけてみた の商品レビュー
著者夫妻と6匹の猫たちの国東半島での暮らしを綴るフォトエッセイである。 大分県の瀬戸内の海に面した地。温暖だが冬は雪も降る。 著者らは、かつてはミカン畑だった小山に移り住んだ。過疎化で人家は減り、隣家は300メートル先に1軒だけというからすごい。車ならば10分で市街地まで行けるが...
著者夫妻と6匹の猫たちの国東半島での暮らしを綴るフォトエッセイである。 大分県の瀬戸内の海に面した地。温暖だが冬は雪も降る。 著者らは、かつてはミカン畑だった小山に移り住んだ。過疎化で人家は減り、隣家は300メートル先に1軒だけというからすごい。車ならば10分で市街地まで行けるが、ほとんど「人里離れた」と言ってもよい環境だ。 やがて、家の庭先に、野良猫一家が訪れるようになる。母猫と二匹の子猫。用心深い母猫は容易に人には近づかないが、冬を危ぶんだ著者の計らいで、子猫は紆余曲折を経て、この家の猫となる。 その後、山に捨てられていた、まったく別の4匹の子猫を保護することになり、6匹の猫と2人の人間の暮らしが始まる。 タイトルからは、猫たちにGPSがつける話が主かと思うところだが、これは終盤にならないと登場しない。それはそれで確かにおもしろいエピソードなのだが、そこへ至るまでの前段が本当におもしろい。 猫たちは、出自からして、野良であり、野生を秘めている。「人里」離れた地であることもあり、原則、家と外で、出入り自由が許されている。 とはいえ、雨露凌げる屋内は快適だし、餌も自力で取るよりもらう方が楽である。 野生の自由さと飼われる安心感。それぞれの猫はそれを天秤に掛けつつ、人や他の猫との関係を縮めたり離したり、「ちょうどよい」距離感を探っているように感じられる。 争わずに済む遠さ、煩わしすぎない近さ。 あるものは臆病だし、あるものは大胆だ。人より猫の方が好きなもの、猫より人の方に興味があるもの。コワモテだけど実は優しい子。根っからのビビり。勝ち気だけど甘えん坊。 個性あふれる猫たちの性格が徐々にわかってくる。 彼らの暮らしには、「日課」がある。 人と猫の朝の散歩。朝夕5時の食事。日課に合わせて、ラッパや「犬のおまわりさん」の音楽で合図する。ラッパを吹けば「おや散歩ですか」とやってくる。「犬のおまわりさん」で「わぁカリカリ(ドライフード)だ」と駆けつける。そうやって半野良・半飼い猫たちの生活に区切りが入る。 GPSをつけてみたきっかけは、長期間猫が留守にしたり、思わぬところで猫とひょっこり出会うことがあったためだという。 つけてみた結果、猫たちが夜に活動していることが判明する。夜中ずっと歩き続けているもの、途中で一休みして帰って来るもの、やっぱりビビりで家の近くしかうろうろしないもの、とそれぞれ個性的だが、どの子も朝のごはんに間に合うように帰ってきて、何食わぬ顔で寝ているというのが楽しい。まるで「一晩ずーっと寝ていましたよ」というかのように。 街中の暮らしなら、これほど自由には出来ないだろう。完全に野良ならGPSなどつけることもかなわないだろう。 つかず離れず。ともに暮らすということの意味を、猫たちはよくわかっているようにも思う。 昔、人と猫が最初にともに暮らし始めた頃も、猫たちはこんな風に距離を測りながら、人の暮らしに入り込んできたのだろうか。 穏やかな著者の語りと、美しい大自然の中の猫の写真を眺めつつ、心地よい思索に誘われる1冊である。
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ウチの猫にもGPSつけてみたい。外に出たら危険も伴うけど本来の猫の生き方が出来るように思う。『せちがらい世の中に一服の清涼剤』のような一冊ですね(^。^)
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小さな山のてっぺんで300m先に隣家が1軒あるきり、という環境での猫6匹との暮らしを描いたエッセイ。 うちは小さなアパートで猫1匹と暮らしているが、自由に野山を駆け巡っている猫のエピソードの数々にはこんなに能力を秘めている生き物なのか!と驚かされっぱなし。猫飼いさんにぜひ自分家の...
小さな山のてっぺんで300m先に隣家が1軒あるきり、という環境での猫6匹との暮らしを描いたエッセイ。 うちは小さなアパートで猫1匹と暮らしているが、自由に野山を駆け巡っている猫のエピソードの数々にはこんなに能力を秘めている生き物なのか!と驚かされっぱなし。猫飼いさんにぜひ自分家の子と比べながら読むと面白いと思う。 写真も豊富で野山を歩き回る猫たちの生き生きとした表情もとても魅力的。 6匹いるから個性の差も見られてとても面白かった!
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