教養教育と統合知 の商品レビュー
本書は教養教育の概念と、それに付け加える統合知に関する知見について、誌上の研究会方式ないし往復書簡形式で議論している。本書の基底にある概念は専門知と教養知とそれらの統合知である。この統合知の重要性を念頭に、各著者がそれぞれの専門領域ないし実践例から話題を提起している。今日に教養教...
本書は教養教育の概念と、それに付け加える統合知に関する知見について、誌上の研究会方式ないし往復書簡形式で議論している。本書の基底にある概念は専門知と教養知とそれらの統合知である。この統合知の重要性を念頭に、各著者がそれぞれの専門領域ないし実践例から話題を提起している。今日に教養教育の実施には、かつての一般教育の枠組みでは不十分であり、教養教育は高度教養教育として専門課程(後期教養教育)・大学院教育段階で取り組むべきとの主張が複数個所で示されている。市民性の啓蒙、公共心の涵養、人格・品格の陶冶、文理融合の俯瞰力といった要素が新しいリベラルアーツの理念との提示がある。各論点に新規性は当然ないが、おそらく相応の議論の末の帰結なのだろう。議論の中ではロスブブラットによるリベラル・エデュケーションの見解を引いたり、例のハーバード大学の報告書を踏まえたりしたうえで、現実の大学教育における教養教育の実例を踏まえ、検討された結果が十分に整理されまとめられた。理念と事例の双方を往還しながらアプローチした研究は多くはないので貴重な研究といえよう。
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