北野武映画の暴力 の商品レビュー
映画の草創期から切り離すことのできない映画と暴力。葛藤を大胆に解決する手段としての暴力を確立させた「大列車強盗」からサムペキンパーと深作欣二を経て、北野武監督初期作「その男凶暴につき」「3-4×10月」「ソナチネ」という暴力3部作における暴力を考察する。 サムペキンパーは「ワイ...
映画の草創期から切り離すことのできない映画と暴力。葛藤を大胆に解決する手段としての暴力を確立させた「大列車強盗」からサムペキンパーと深作欣二を経て、北野武監督初期作「その男凶暴につき」「3-4×10月」「ソナチネ」という暴力3部作における暴力を考察する。 サムペキンパーは「ワイルドバンチ」で、西部劇の終焉の時代に善と悪の二項対立を逆転させ、悪と更にその上の悪の対立を描き、善悪に関係なく存在する暴力性を暴いた。 深作欣二は「仁義なき戦い」で、時代劇が下火になってきた時代にそれに変わる新たな暴力映画として任侠映画のブームを作る。そこで描かれる暴力に正当性は無く、暴力による破滅を描いた。 これら暴力そのものをテーマにした作品の延長線上に現れた北野武監督の暴力3部作。 因果性が殆ど無く、暴力そのものが前面に押し出た描写が多い。しかし上記した2人の作品との違い、一方的な暴力と無反応な被害者の存在が目立つ。暴力が葛藤を解決する手段では無く、暴力そのものが目的のように。暴力は不能の男たちの対話であり、弾丸は男根の象徴であるというような3部作の男女の考察がとても興味深かった。 他にも様々な考察があったが、ここまで映像演出に秀でた監督だとは知らなかった。まだ暴力3部作とHANABIしか観れてないので、今後も追っていきたい。 著者の武映画との出会いのエピソードも魅力的。
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