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動く標的 の商品レビュー

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2024/02/24

アメリカの作家ロス・マクドナルドの長篇ミステリ作品『動く標的 【新訳版】(原題:The Moving Target)』を読みました。 ここのところミステリ小説はアメリカの作家の作品が続いています。 -----story------------- 私立探偵リュー・アーチャー初登場...

アメリカの作家ロス・マクドナルドの長篇ミステリ作品『動く標的 【新訳版】(原題:The Moving Target)』を読みました。 ここのところミステリ小説はアメリカの作家の作品が続いています。 -----story------------- 私立探偵リュー・アーチャー初登場の記念碑的名作を新訳で贈るハメット、チャンドラーに並ぶ正統派ハードボイルドの雄による傑作! 私立探偵リュー・アーチャーは、石油業界の大物サンプソンの夫人から、消えた夫を捜してほしいという依頼を受けた。 ロスアンジェルスの空港からお抱えパイロットをまいて失踪したというのだ。 その後、夫人宛に本人の署名入りの手紙が届く。 取引きに必要な十万ドルを用意せよと。 誘拐か? だとしたら誰がなぜ? 彼の安否は? 怪しげな聖人、往年の映画女優、ピアノ弾きの女、バー経営者らとの関係は? 連続する殺人事件は何を語る? マーロウ、スペイドとともにハードボイルド史上不滅の探偵リュー・アーチャー初登場の記念碑的名作、新訳版。 解説=柿沼瑛子 ----------------------- 1949年(昭和24年)に刊行された、タフで優しい私立探偵リュー・アーチャーを主人公とするシリーズの第1作です。 テキサスの石油王ラルフ・サンプスンが失踪した……妻エレインの依頼により私立探偵リュー・アーチャーは捜索の依頼を受けるが、まもなく、10万ドルの現金を用意せよとの速達が本人の署名入りで届く、、、 どうやら誘拐事件らしい……だが、金を渡したからといって当人の安全が保証されるわけでなし、第一この手紙にはうさんくさい点が多すぎる……。 夫人とは犬猿の仲である義理の娘ミランダ、彼女が愛する一家専属のバイロットのアラン・タガート、娘との結婚を望む弁護士アルバート・グレイヴズといった面々が複雑に絡み合うなか、次々に殺人事件が……正統派ハードボイルドの第一人者が贈る、私立探偵リュー・アーチャーの輝かしきデビュー長編! ロス・マクドナルドの代表作であり、私立探偵リュー・アーチャーの初登場作です……私立探偵リュー・アーチャーが石油王ラルフ・サンプスンの失踪(誘拐?)事件を調査するうちに、複雑な人間関係や殺人事件に巻き込まれていく物語、、、 登場人物の心理や背景を深く掘り下げ、事件の真相に迫っていく過程を緻密に描き出されていましたね……また、ロサンゼルスなどの都市や風景も、鮮やかに描写されているところが印象的でした。 ハードボイルド小説を読んだのは久し振り……これはこれで好きなジャンルなんですよねー 世界感に引き込まれましたね、、、 久し振りにレイモンド・チャンドラーの作品でも読んでみようかな。

Posted byブクログ

2023/04/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

リュウ・アーチャーのデビュー作ということで、他のアーチャーシリーズと比べると、まだまだ出来はいまひとつというところです。 でも、この作品には解説でも、書かれているように、「閉塞感の中にも、風が吹いているような、前方が開けているようスピード感が」あります。 「今はどこにいるの?」 「サンタテレサの死体仮置き場だ」 「空いたいわーあと一度だけでも」 暗い夢の中から発せられた甘い言葉だった。 続く沈黙の中、その言葉は彼女の心の際を超えて広がり、沈む太陽が作る影と同じ長さの影になった… ロス・マクドナルドの作品に共通して出てくるのは、愛に破れて罪を犯す人たちの姿。それも人生を背負った愛を。 わたしはそれが見たくて、ロス・マクドナルドの本を読んでいるのかもしれません。

Posted byブクログ

2021/07/06

シリーズ十二作目「さむけ」で私のハードボイルド熱を再燃させた<リュウ・アーチャーシリーズ>の記念すべき第一作目。しかも、田口俊樹氏による新訳版である。錯綜した人間関係はこのジャンルのお家芸と言えるが、今作の筋書き自体はそこまで複雑ではない。作風はチャンドラーの模倣を抜け出せておら...

シリーズ十二作目「さむけ」で私のハードボイルド熱を再燃させた<リュウ・アーチャーシリーズ>の記念すべき第一作目。しかも、田口俊樹氏による新訳版である。錯綜した人間関係はこのジャンルのお家芸と言えるが、今作の筋書き自体はそこまで複雑ではない。作風はチャンドラーの模倣を抜け出せておらず、若き日のアーチャーの人物造詣も些か凡庸的。戦後アメリカの世相を反映した陰鬱な世界観や、些細な心の揺れが引き起こした哀しい結末など、惹かれる要素が多分にあるものの、些か物足りない仕上がり。ここから徐々に洗練されていくのだろうか。

Posted byブクログ

2019/06/09

旧訳で読んでいるので再読なのだが、内容をほぼ覚えていなかったので新鮮に読めた。リューアーチャーの初出の作品だけあって、シリーズを通して記憶している印象と違い、良く動くし良く喋り、まるでフィリップマーロウのよう。ストーリーの切れ味も全体的に若い感じが否めない。

Posted byブクログ

2018/05/03

ハメット、チャンドラーの後継者と呼ばれたロス・マクドナルドの手になるロスアンジェルスの私立探偵リュー・アーチャーが活躍するシリーズ物の第一作。何十年も前に訳されたハードボイルド小説の新訳である。どうして今頃になってと思うのだが、村上春樹の新訳が出たことでチャンドラーを読み返すこと...

ハメット、チャンドラーの後継者と呼ばれたロス・マクドナルドの手になるロスアンジェルスの私立探偵リュー・アーチャーが活躍するシリーズ物の第一作。何十年も前に訳されたハードボイルド小説の新訳である。どうして今頃になってと思うのだが、村上春樹の新訳が出たことでチャンドラーを読み返すことになった。新訳と旧訳、さらには原書を読み比べるという愉しみも見つけた。きっとこれも新しい読者を見つけるだろう。 サイコパスやシリアルキラーが、考えられないような残酷な犯罪を犯すのが、昨今のミステリ界。それに倦んだ読者が古典的なミステリを希求している、ということがあるのかもしれない。ヴァン・ダインやディクスン・カーなどの新訳も出ている。そういう意味ではこの作品、どこにでもいる普通の人々の中に潜む邪悪な心というものに目を向けているという点でぴったりかもしれない。 時は第二次世界大戦が終わって間もない頃、舞台はサンタテレサという名に変えられているが、南カリフォルニアのサンタバーバラ。そこに住む石油業界の大物サンプソンが行方不明になり、お抱え弁護士アルバート・グレイヴズの紹介で、私立探偵リュー・アーチャーが夫人に捜索を依頼される。アルバートは元検事でアーチャーは検事時代、彼の下で働いていた、という設定はチャンドラーのマーロウとバーニー・オールズの関係に倣ったのか。 サンプソンという人物は実力で成り上がったやり手だが、息子が戦死してから酒浸りとなり、星占いや怪しい宗教に入れあげて、家族が危ぶむような生活を送っていた。足に障碍を持つ妻との関係は冷え切っており、娘のミランダを溺愛していた。もし死ねば遺産は妻と娘で二分される。ミランダはお抱えパイロットのタガートという青年に夢中だが、タガートには他に好きな相手がいるらしい。アルバートもミランダに求婚中で、それは父の認めるところだった。 被害者の死で利益を得るものが犯人というのは常識だが、起きているのは誘拐で、十万ドルという身代金は五百万ドルという遺産総額と比べると高が知れている。被害者の交際相手を調べていくうちに、捜査線上に次々と怪しい人物が浮かび上がってくる。酒がなくては自分を扱いきれなくなっている大金持ちにたかる、いずれも裏に事情のある危険な連中だ。 星占いが得意な落ち目の映画女優、その夫で危ない稼業に手を染める白髪の英国人、山上の小屋で太陽神崇拝に耽る似非宗教家、コカイン中毒で身を持ち崩した女性ジャズ・ピアニスト、と一癖も二癖もある人物が交錯し、テンポよく物語は進んでゆく。身代金をめぐっての仲間内の抜け駆け、裏切り、それに遺産をめぐる三角関係がからみ事件は錯綜する。アーチャーは事件解決の糸口を見つける。しかし、そこには思いもよらない結末が待っていた。 家族を主題とする物語であり、それに終わったばかりの戦争が影を落としている。家族の誰にも愛されていた息子の戦死が父と母を苦しめ、兄の代わりになれない妹を苦しめている。戦争当時は空の英雄ともてはやされた元パイロットの青年は、戦争が終わってしまえばただの人だ。亡き息子の身代わりとして金持ちに雇われ、自家用機のパイロットでもするしかない。金の力が人と人との間に軋轢を生じさせ、思わぬ事態を招くことにもなる。 よく練られたプロットで、特別な悪人ではないごくごく普通の人間が、ある状況下で次第に追い詰められていき、犯罪に手を染めるまでに至るプロセスが子細に描かれている。謎解きにはそれほどこだわらないハードボイルド小説でありながら、叙述はフェアで、目を留めて置かねばならないところには的確に目配せがされており、再読すれば、そこに書かれていることの意味がよく分かる。 一つだけ気になったところがある。終始サンタテレサで通しておきながら、アーチャーが情報局時代の上司に連絡するところで「あなたのボスにサンタバーバラの検事と連絡を取るよう言ってください」という箇所(P.181)がある。ここは原作でもそうなっているのだろうか?それとも訳者のミスだろうか。旧訳に当たってみようと思ったのだが、手元にない。気になって仕方がない。

Posted byブクログ