時を超え僕は伯爵とワルツを踊る の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
面白く、優しい読後感の小説です。 タイムスリップものは大好きなので、店頭で見かけて迷わず購入を決めました。 現代では職業医師の智実は「相手の匂いで病状を的確に言い当てる」という異能の力を持っています。 それゆえに、幼い頃から実の両親にさえ気味悪がられ、孤独を抱えて成長しました。 そんな彼は医局でも孤立していて、ある日、車にはねられそうになったところ、大正時代にタイムスリップ。そこで病院を経営する実業家でもある凛々しい伯爵と出会います。 彼の邸で伯爵の幼い甥の家庭教師として働くことになった智実でしたが、両親のいない幼い甥や伯爵には悲しい過去があると知りー。 時を越えて出会った二人は互いに心に悲しい闇を持っていて、余計に惹かれ合い結ばれる。 ラストの方まで来て、もしかしたらと思っていたのですが、やはり「関東大震災」が起こり、それがきっかけで智実が現代に戻るんだなーと納得しかけたら、大どんでん返しがありました。 智実は結局、現代に戻らず、伯爵と大正時代で生きてゆくことになります。 ここ、従来のありがちな結末と違い、とても良いと思います。 思う、、、のではありますが、智実が現代に戻らずじまいにしては、あまりにあっさりと終わりすぎというか、少しの「悲壮感」もなく幕がおりるため、何か呆気ない終わり方のように感じられてしまうのです。 ここで、もう少し何かー智実の突然の失踪が現代では、どのような事態として受け取られているのか、とか、彼には優しくない時代であったとしても仮にも今まで生きてきたすべてを捨てるのだから、何かしら彼の心の中に複雑な想いがある方が自然で、できれば、そういうことを最後に少しだけ描いていた方が説得力があったかなーと個人的には思いました。 ただ、感じ方はそれぞれなので、一概には言えないとは思いますが。 大正時代らしい雰囲気も作品によく出ていたと思います。
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