裁量労働制はなぜ危険か の商品レビュー
■残業代不払い合法化の狙い 経済界がこのような裁量労働制拡大を狙う意図は、残業代請求訴訟に関する判例動向を踏まえると明確になってくる。 まず①PDCA型業務の裁量労働制の想定する適用対象者は、現在管理職として残業代ゼロとされている労働者だ。現状でも多くの職場では、一定の管理職...
■残業代不払い合法化の狙い 経済界がこのような裁量労働制拡大を狙う意図は、残業代請求訴訟に関する判例動向を踏まえると明確になってくる。 まず①PDCA型業務の裁量労働制の想定する適用対象者は、現在管理職として残業代ゼロとされている労働者だ。現状でも多くの職場では、一定の管理職(課長職・部長職など)以上の労働者を労働基準法上の管理監督者として扱い、残業代をゼロとしている。他方で、判例の管理監督者に対する法解釈は極めて厳格で、経営者と一体的立場にあるような場合に限り管理監督者に当たると認めている。そのため、残業代ゼロ扱いされている管理職について、使用者は労働者から請求されたら残業代ゼロを合法化できず敗訴する、重大な法的リスクを負っている。そして、この法的リスクについて、経済界は良く理解している。したがって、経済界は管理監督者による残業代ゼロに代わる新たな制度を切望しており、これがPDCA型業務の労働者を対象とする裁量労働制の拡大の狙いなのだ。 ■コントロールできない業務量 裁量労働制は、遂行方法や時間配分を労働者が決定できる制度である。こうした裁量が実際に備わっている場合、労働者は勤務時間を自ら選ぶことができる。このような制度は労働者の自由を増すものであり、労働の能率を上げることにも寄与するだろう。 しかし、この事例からわかるように、それは労働者が「業務量」をもコントロールできる場合に限られている。いかに業務遂行の方法や時間配分を決定できたとしても、業務量そのものが過大であれば、労働時間は延長され、「みなし労働時間」から乖離していく。裁量労働制には、そうした業務量に歯止めをかける仕組みが十分に備わっておらず(第2、4章参照)、むしろ過重な命令によって生じた超過労働を「労働者の能率の問題」にすり替えてしまう危険性を有している。また、裁量労働制においては、労働者は勤務の場所も自宅など、自分の好む場所を選択できる。この事例の労働者も会社で長時間残業を行うよりは、自宅で作業できることを「好ましい」と思う部分もあるという。ところが、ここでもやはりその業務量が多ければ、無給残業が強要される結果となる。
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第1章 「働き方改革」と裁量労働制 第2章 裁量労働制とは何か―法的観点から 第3章 裁量労働制の何が問題か? 第4章 裁量労働制の運用と労働組合 第5章 裁量労働制の労働相談対応マニュアル 編著:今野晴貴(1963-、仙台市、社会運動家)、嶋崎量(1975-、弁護士) 著者:...
第1章 「働き方改革」と裁量労働制 第2章 裁量労働制とは何か―法的観点から 第3章 裁量労働制の何が問題か? 第4章 裁量労働制の運用と労働組合 第5章 裁量労働制の労働相談対応マニュアル 編著:今野晴貴(1963-、仙台市、社会運動家)、嶋崎量(1975-、弁護士) 著者:三家本里実(1988-、社会運動家)、裁量労働制ユニオン
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法律があっても抜け道があって、企業側はそこを当然突いてくるし、それは黙認され、大きな問題が起こったときだけ話題になり、いつの間にか沈静化する。日本ってどうしてこんなことになっているんだろう。長時間労働も問題だって分かっていながらなぜ解決されないのか。「根本的な解決」なんてことはで...
法律があっても抜け道があって、企業側はそこを当然突いてくるし、それは黙認され、大きな問題が起こったときだけ話題になり、いつの間にか沈静化する。日本ってどうしてこんなことになっているんだろう。長時間労働も問題だって分かっていながらなぜ解決されないのか。「根本的な解決」なんてことはできないの? 少子高齢化とか、AIの躍進とか、日本と比較した海外での待遇とかあったりして、日本の今までのやり方の中でぐちゃぐちゃやってる場合じゃないと思う。
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わかりやすい。 裁量労働制って破綻した仕組みなんだなあと思う。みんなで不幸の道に突っ走っている。 裁量労働制で仕事している人が8時間よりも少なく仕事していることはほとんどないって悲しすぎる。
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