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丘の上 豊島与志雄メランコリー幻想集 の商品レビュー

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2018/08/01

第三次『新思潮』のメンバーであったり、太宰治の葬儀委員長を務めていたり、レ・ミゼラブルの翻訳(仏文学者)をしたり、児童文学を書いたりなど、多方面で活躍した事で知られている豊島与志雄の作品集。 大正三年~昭和二十七年に発表した作品を、だいたい年代順に収録しており最初から順番に読んで...

第三次『新思潮』のメンバーであったり、太宰治の葬儀委員長を務めていたり、レ・ミゼラブルの翻訳(仏文学者)をしたり、児童文学を書いたりなど、多方面で活躍した事で知られている豊島与志雄の作品集。 大正三年~昭和二十七年に発表した作品を、だいたい年代順に収録しており最初から順番に読んでいくと、下宿で強迫観念に追い詰められて極度の神経衰弱に陥っている学生を描く「蠱惑」。心中まで思いつめた男女二人のの心の機微を描いた「丘の上」や「常識」。大戦の不穏な香りが漂う中国を舞台に、説話的な手法を使って描いた「碑文」や「秦の憂鬱」。戦後の復興の中生きる人を描く「沼のほとり」「絶縁体」……と、それぞれ作品を書いた時代の風潮を切り取りながらも、その中に一貫して主人公がそれこそ「神経症的」に(サブタイトルにもなっている、まさに「メランコリー」な印象が凄く強い)自己の内面を述懐する、ある意味ちょっと難解な、でもどれも不思議な余韻を残す面白い作品集でした!

Posted byブクログ