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『スタア誕生』 の商品レビュー

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2022/06/28

例えば〈薄いピンクで厚地のデシン風のカーテン〉とそこに〈丁度、星空のようにちりばめて縫いつけて〉ある〈ガラス玉〉に、〈夕日かそれとも朝日に染って淡い透明なバラ色に薄く光っている空の下にある池の噴水からとびちる水の飛沫に光線があたって、透きとおるまばゆい七色に輝いている様子を連想す...

例えば〈薄いピンクで厚地のデシン風のカーテン〉とそこに〈丁度、星空のようにちりばめて縫いつけて〉ある〈ガラス玉〉に、〈夕日かそれとも朝日に染って淡い透明なバラ色に薄く光っている空の下にある池の噴水からとびちる水の飛沫に光線があたって、透きとおるまばゆい七色に輝いている様子を連想すべきなのかもしれない〉空間。或いはその〈無数のガラス玉〉の振りまく〈光の飛沫〉(〈天井や壁の照明を反射させて透明に輝く青や紫や赤やオレンジの…〉)と、〈光の飛沫〉が開いて行くスクリーンの白い輝き、〈シネマスコープの深紅色の絹地を背景に〉〈濃いブルー、紫、輝く黄色、緑色、濡れたような赤、透明な光線のようなオレンジ色にきらめきながら次々と音もなく、宙をゆっくりと舞う雪のように〉降りしきりふりつもる〈イミテーションのガラス玉のダイヤ〉…。それらを読むことで、と言うか、読みつつそれらを生きることで、自分はまず、かつて作者から映画へと捧げられた一冊の本、『愉しみはTVの彼方に』のことを思い出すのだし、その書物が〈ささやかな映画へのオマージュ〉として書かれ、作られたものであるのだということ、かの書物それ自体がまさに映画へのオマージュであるのだということをも当然、思い出すのだし、また今一度、鮮烈に思い知らされもするのだ。甘く、痛切なオマージュ。映画という魅惑に対する、その魅惑を生きるという体験に対する。愛であり、実践であり、オマージュそのものとして、書かれることになった書物と、小説のこと。その息苦しいまでの快楽について。(…〈バラ色〉は例えば〈薄い水色とごく薄い灰色と白の濁った空に輝いている〉雲のものであれば、それは〈短い束の間の時間、幸福感で充たされる美しさで、私を呆然とさせてしまう〉色でもあるはずだ。)

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2018/04/08

これはなんと「噂の娘」を受けたもの。途中までそれに気づかず、誰が語っているのかなかなかわからなかった。大体、著者の小説は、人物の関係などを親切に説明してくれたりはしないが、本作ではその傾向が強くて、誰が誰でどういう関係かずいぶん読まないとつかめない(もしかして私だけ?)。 しか...

これはなんと「噂の娘」を受けたもの。途中までそれに気づかず、誰が語っているのかなかなかわからなかった。大体、著者の小説は、人物の関係などを親切に説明してくれたりはしないが、本作ではその傾向が強くて、誰が誰でどういう関係かずいぶん読まないとつかめない(もしかして私だけ?)。 しかしまあ、いつものことながら、うねるような文章の流れに翻弄されつつ、行きつ戻りつ読み進めていく、この快感。まったく他では味わえない読書体験なのだった。語り手は自在に入れ替わり、時は前後し、記憶の輪郭はどんどんぼやけていく。それでいて、着ていたブラウスの襟の刺繍であったり、寝転んだ畳のひんやりした感触であったり、そういう細部はくっきり鮮明に浮かんでくる。まったく「過去」ってこういうものだなあとしみじみ思う。 これは、ストーリー展開の面白さや、わかりやすく共感を誘うような描き方で読者を引きつける小説とはまったく違う、別の場所にあるものだ。読んでいると、これこそが小説なのではないかという気になってくる。

Posted byブクログ

2018/03/21

金井美恵子の最新作。 『噂の娘』の続編でもあるが、特に前作を読んでいなくても問題はない(そもそも件の〝噂の娘〟の文庫本、今、新刊で入手可能なのだろうか……)。 久しぶりに金井美恵子の文章を読んで、なんとなくすっきりした。こういう饒舌な文体って最近はなかなか無いんだよね〜。

Posted byブクログ

2018/02/06

【あの人たち、あの娘たちは今どうしているのだろうか――】すずらんの香水、首筋に感じる風、数多の映画の情景、幾度も紡ぎ直される物語。50年代の記憶を精緻に編みこんだ切なく甘い長編小説

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