官僚たちのアベノミクス の商品レビュー
官僚たちのアベノミクス 軽部謙介著 異形の経済政策の生成過程 2018/4/7付日本経済新聞 朝刊 安倍晋三首相の経済政策はアベノミクスと呼ばれている。異次元の金融緩和に加え、財政政策、成長戦略の組み合わせは「3本の矢」といわれるが、やはり金融政策が前面に出たという点で異...
官僚たちのアベノミクス 軽部謙介著 異形の経済政策の生成過程 2018/4/7付日本経済新聞 朝刊 安倍晋三首相の経済政策はアベノミクスと呼ばれている。異次元の金融緩和に加え、財政政策、成長戦略の組み合わせは「3本の矢」といわれるが、やはり金融政策が前面に出たという点で異形の経済政策といえるだろう。 その政策はいかにして形作られたのか。首相官邸、経産省、財務省、日銀、金融庁、経済界などを丹念に取材し、その過程を克明に検証したのが本書である。インタビューしたのは約120人。驚くような事実が明かされているわけではないが、豊富な取材がその時々の舞台裏を浮き彫りにしてくれる。 たとえば、安倍政権発足前から経産省の一部官僚らがどのようにアベノミクスを準備していたのか。政府・日銀の共同声明はどのようにつくられたのか。アジア開発銀行(ADB)総裁だった黒田東彦氏を日銀総裁に起用する背後で、後任のADB総裁人事にはどんな駆け引きがあったのか――。 極力、価値判断を交えない淡々とした筆致は、アベノミクスを酷評したり、あるいは礼賛したりすることを期待している読者にとってはやや肩すかしかもしれない。それでも同時代を生きるジャーナリストによる丁寧な検証は、アベノミクスの評価や今後のあり方を判断するための貴重な材料となろう。(岩波新書・860円)
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金融政策を政党の、そして政府の最重要課題に明記したという点で異形の政策である「アベノミクス」。本書は、時事通信のジャーナリストである著者が、延べ約120人へのインタビュー、公文書、議事録、メモ、日記、備忘録など様々なソースを駆使して、「アベノミクス」という政策について、いつ、どこ...
金融政策を政党の、そして政府の最重要課題に明記したという点で異形の政策である「アベノミクス」。本書は、時事通信のジャーナリストである著者が、延べ約120人へのインタビュー、公文書、議事録、メモ、日記、備忘録など様々なソースを駆使して、「アベノミクス」という政策について、いつ、どこで、誰によって形成されていったのかの原点を記録しておこうという試みである。 安倍内閣を陰で操っているとも言われる今井尚哉秘書官の影がほとんど見えないなど、安倍内閣の政策決定過程の全てを明らかにできているとは思えなかったが、実力あるジャーナリストらしく、安倍内閣における政策決定の舞台裏を多角的かつ克明に描き出しているという感想を持った。政策決定過程のダイナミズム、また、政治家、経産省、財務省、日銀など、それぞれのプレーヤーの特性がよくわかって、興味深かった。
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アベノミクスの形成過程がよくわかる良書。アベノミクスとはつまりは円高と株価対策であったということか。本書において成長戦略が語られないことは、極めて象徴的に思われます。
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