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ブッチャーズ・クロッシング の商品レビュー

4.4

5件のお客様レビュー

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2019/11/10

1960年の作品で、1873年時代の話だけど、穴蔵から掘り出してきたような古くささは感じられない。舞台はアメリカで流行してきた水牛のコートの材料となるバッファローを狩るための入植地での話。大学に通う裕福な青年が単純に自然の大地を理解したい、そのためにそこで行われている狩に同行し、...

1960年の作品で、1873年時代の話だけど、穴蔵から掘り出してきたような古くささは感じられない。舞台はアメリカで流行してきた水牛のコートの材料となるバッファローを狩るための入植地での話。大学に通う裕福な青年が単純に自然の大地を理解したい、そのためにそこで行われている狩に同行し、費用を出すという話。全然キャンプ用品などは開発されておらず、職人達の生きた知恵と経験のみで話は進んで行く。沢山屠る。沢山剥ぐ。荷物を運ぶ牛、馬頑張る。雪に囲まれて帰れなく一冬過ごす。最近山の話多いなあー。

Posted byブクログ

2019/03/23

ボストンの司祭の息子、ウィル・アンドリューズは南部の小さな町のブッチャーズ・クロッシングへやってきた。 大学の講義で自然が自己を高める文献を読み感銘を受け、自分も自然を体験したかったのだ。 昔父の知り合いで今はバッファロー皮の商売をしているミスター・マクドナルドのところに寄ったウ...

ボストンの司祭の息子、ウィル・アンドリューズは南部の小さな町のブッチャーズ・クロッシングへやってきた。 大学の講義で自然が自己を高める文献を読み感銘を受け、自分も自然を体験したかったのだ。 昔父の知り合いで今はバッファロー皮の商売をしているミスター・マクドナルドのところに寄ったウィルは、昔ながらの猟師のミラーを紹介される。 昔はバッファローは何千頭もの群れを成していた。しかし今では数百頭いればいい方だ。だが自分は10年前に山奥のバッファローの生地をみた。そこには五千頭のバッファローの群れがいたんだ。資金さえあればあの群れを狩れるのに。 そう語るミラーの言葉にウィルは叔父から受けた遺産をつぎ込み、資金提供者としてミラーと共にバッファロー狩りに出ることになった。 同行するのは、猟師のミラー、キャンプ係のチャーリー・ホージ、皮剥ぎ職人シュナイダー。 皮売人のマクドナルドと話を付けた彼らは、バッファローの群れを探しに旅に出る。 ウィルに惹かれたという娼婦のフランシーンは言う。今のあなたは優しくて手は柔らかいけれど、旅に出て戻ってきたらきっと別人になってしまう。 平原と山道を果てしなく進み、山に入るとさらに過酷な旅。 凍傷で片手を失くしたチャーリーは、酒と聖書が手放せず神の啓示を待っている。 現実主義者のシュナイダーは、狩人であることが存在意義のすべてであるミラーとは悉くぶつかる。 ウィルの前に顕れる自分が憧れた以上の自然の力。 ついにバッファローの群れを見つける。谷を覆うバッファロー、五千頭はいる。 ミラーは淡々と効率的にボスバッファローを仕留める。ミラーはどのバッファローを倒せば群れを操れるかを熟知していた。次々と倒れるバッファローの皮を次々に剥いでゆくシュナイダーとウィル。 積み上げられる皮と放置される肉体、滴る血、食料となる生肉、腐ってゆく匂い、バッファローにたかっていたノミ。 それらはウィルの胸を悪くするが、資金提供であり旅を申し出た彼はこのバッファロー殺戮を途中で止めるわけにはいかなかった。 帰路を促すシュナイダーに対し、ミラーは冬を越してでもこの群れのすべてを狩るという。定期的な銃声は響き続け、谷から逃げようとした数百頭のリーダーを仕留め群れを操る。 ところが群れの全滅まであとすこしということこで雪が降り始める。 最初はちらちらと舞っていた雪は瞬く間に猛吹雪となり、彼らの目線と行く手を阻む。 なんとかキャンプ地を張った彼らは、半年から八か月山の中に足止めされる。 寒さを凌ぐためにバッファローの皮を被る。あれほど殺したバッファローの肉は雪に埋もれて食料に苦しむ。彼らは次第に一人一人自分の世界に閉じこもるようになる。 春が訪れてやっと帰り道に出立することになった。 剥いだ皮の千枚を持ち帰り、四千枚はまた取りに来るという。 千枚の皮を積んだ馬車で、雪の悪路を彼らはブッチャーズ・クロッシングへと帰る。 果たして彼らの全財産である皮は無事に持ち帰れるのか。 そして「自然の中に行けば本当に強い真の自分が見つかる」というウィルの望みの行く末は…。 *** 都会の青年が資料の上での自然に憧れ知ろうとするが、自然と、それと共に生きてきた人間たちは青年の憧れを砕くほどの荒い力を持っていた。  入れるところはどこにでも入って行き力で踏みにじり去った後は自分にも相手にも何も残らない…とはアメリカそのものを風刺した描写でもあるということ。 小説としては、淡々とした書き方によりかえって身に迫るような描写となっています。登場人物の感情を「彼は怒った」のように直接書くのではなく、「放った火にすべてを放り込んだ」という行動で、彼がどんな気持ちを持ったかを読者に示します。 バッファロー殺戮も、「定期的に響く銃声」という事実を書くことにより、状況の凄まじさを読者にわからせます。 なんとなく、何かをここに置いていくような気がしていた。自分にとって大切だったか知れないものを。それが何なのか、自分にはわからない。(P254) おまえらは他人の指図を受けない。絶対に。自分の流儀とやらで獲物を殺しては、あたりの土地に嫌なにおいを振りまいていく。売りさばけないほどの大量の皮を後から後から送り込んで市場を破綻させておきながら、おれのせいで人生が台無しになったとぬかして泣きついてくる。(P299) いまはもう自分をこの部屋へ、この肌へと不思議な魔力で惹きつけた情熱を思い出すことはできない。彼をこの大陸の反対側へと駆り立て、自然の中へ引き込んだもうひとつの情熱の力も忘れてしまった。あそこへ行けば、想像したとおりに揺るぎない自分に出会えると夢見ていた。今彼は何の悔恨もなく、あの情熱の源は虚無だったと認めることができた。 (P328)

Posted byブクログ

2018/08/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『ストーナー』がよかったので、他の作品を読んでみたいと思ったのだ。 ブッチャーズ・クロッシングは地名。 ジュブナイル小説だと思った。小綺麗な格好で都会からやってきた主人公がブッチャーズ・クロッシングにやって来てバッファロー狩りの旅に出る。土と埃にまみれ喉の渇きに苦しみようやくたどり着いた狩場ではバッファローの血にまみれる。身体にいろいろなものがこびりついてもう一枚の皮膚のようになっていく。その上にバッファローの毛皮を纏い冬を越す。再び町へ戻り、身体中に纏わりついたものを全て落とす。汚れや伸び放題の髭、好きだと思っていた女性のことも。 狂気を感じるバッファロー狩りのシーン、雪解け水で水嵩の増した川での衝撃的なシーン、その間にはさまれるのどかといってもいいような水浴びシーン、このバランスがすごいなぁと思った。 皮が流れてしまうとこ、思わず「うわぁ」と声が出た。 乾いていて、クール、好きな作風。

Posted byブクログ

2018/06/26

ストーナーのジョン・ウィリアムズの作品。 ストーナーでは大学という閉ざされた世界での人間の細かな営みをリアルに描き出した作者が選んだのは、大開拓時代のアメリカ西部。 その開拓の最前線の地ブッチャーズ・クロッシングに降り立ったのは、自分探しの旅に出た青年。 彼は地元のハンターと組ん...

ストーナーのジョン・ウィリアムズの作品。 ストーナーでは大学という閉ざされた世界での人間の細かな営みをリアルに描き出した作者が選んだのは、大開拓時代のアメリカ西部。 その開拓の最前線の地ブッチャーズ・クロッシングに降り立ったのは、自分探しの旅に出た青年。 彼は地元のハンターと組んでバッファローの皮を狩る猟に出る。 初めて降り立った西部の地の乾いた埃だらけの大地。その地にへばりつくように暮らす人々。そして、猟場への過酷な旅、命懸けのバッファロー狩りなどすべての描写が生々しく、ぬらぬらとした血の感触まで伝えてくる。 バッファローの大群との出会いから、ブッチャーズ・クロッシングへの帰還まで、その描写は細かく生々しい。 そしてやってくる結末までのスピードある展開にページをめくる手を止められない。 ジョン・ウィリアムズ やはり侮りがたし。 とても面白かった。

Posted byブクログ

2018/03/08

またまた★5つ本! とても力のある小説である。 19世紀後半、野生の山へバッファローの群れを狩りに出る男4人、というワイルドな設定。 厳しい自然を、こんなに緻密で繊細に描写した小説があっただろうかと思うほど。 特に、雪が降り出した時の絶望感、雪や吹雪の描写ときたら。 しかし決し...

またまた★5つ本! とても力のある小説である。 19世紀後半、野生の山へバッファローの群れを狩りに出る男4人、というワイルドな設定。 厳しい自然を、こんなに緻密で繊細に描写した小説があっただろうかと思うほど。 特に、雪が降り出した時の絶望感、雪や吹雪の描写ときたら。 しかし決して野外冒険小説やウエスタン小説で終わらせてはいない。 荒くれ男どもも娼婦たちもリアルで、体温を感じる。 また、裕福な家庭で育ちハーバードに在学していた23歳の青年が主人公であるあたり、『荒野へ』を先取りしているかのよう。 殺戮や暴力、勝利主義なども重なって見えてくる。 思った通りや願った通りにはいかなかったり、絶望的な状況に陥ったりしても、そうだよ、それでも生きねばならぬ、生ききらねばならぬ、と思わされるのは『ストーナー』と同じで、それこそがこの小説に宿る”力”なのだと思う。 それにしても、生涯4本の小説のうちの2本が『ストーナー』とこの『ブッチャーズ・クロッシング』って、どういう作家だ。あまりに高密度、あまりにハイレベル。舌を巻く。

Posted byブクログ