在日朝鮮人アイデンティティの変容と揺らぎ の商品レビュー
博論もの。大阪市大で、版元も左派系、「在日朝鮮人」のタイトルなので、総連系の人権ものかと思ったのだが、予想とは違った。とはいえ、トッカビの会の専従をやっていたという元活動家と言って良い人なのだが、この本は「背信」かもしれないとも。朝鮮学校の話はなく、民族学級に入ったというので、た...
博論もの。大阪市大で、版元も左派系、「在日朝鮮人」のタイトルなので、総連系の人権ものかと思ったのだが、予想とは違った。とはいえ、トッカビの会の専従をやっていたという元活動家と言って良い人なのだが、この本は「背信」かもしれないとも。朝鮮学校の話はなく、民族学級に入ったというので、たぶん日本学校の出身なのだろう。著者のテーマは在日言説であって、北も南もフラットであり、「正義」も「真実」も訴えることはない。朝鮮人に被害者性を求めないことで、日本人の加害者性も出さないのだが、帰国事業や本名運動などでで急進的な日本人が果たした役割には加害性が浮き彫りにされる。金嬉老事件でも同様なのだが、そうした政治運動を背景した運動言説の中にも一定の留保があったことも指摘している。帰国事業の局面で第三者の日本人が北朝鮮を訪問して絶賛したことが帰国の決め手になったという話はよくあるが、北朝鮮の問題点に全く言及していなかった訳でもなく、ある程度分かっていながら帰国した人が多かったのではなかろうか。それだけ差別が酷かったとも、生活が困窮していたという理由はあろうが、実際のところ、運動圏の論理が優先されたとも言える。鄭大均と朴慶植を同列にするという論考は私も読んだことがないのだが、帰化論者である鄭大均が在日に日本への貢献を求めるなら、従来の総連なり、民団なりに貢献を求める在日の論理と同じではないかとの指摘。
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