企業統治改革の陥穽 の商品レビュー
労働経済の専門家によるコーポレートガバナンスに対する意見書。 社外取締役や株主の意見を尊重するあまり、企業が短期的視点に立つ弊害を上げ、経験豊かな従業員を代表する労働組合から意見を聞くことによって生産性を上げる等の効果的な改善が図れるというもの。企業が業績を上げ、または生き残っ...
労働経済の専門家によるコーポレートガバナンスに対する意見書。 社外取締役や株主の意見を尊重するあまり、企業が短期的視点に立つ弊害を上げ、経験豊かな従業員を代表する労働組合から意見を聞くことによって生産性を上げる等の効果的な改善が図れるというもの。企業が業績を上げ、または生き残っていくためには、適切な経営方針が必要であるわけだが、決定するのは社長等の取締役(役員会)である。決定に際し経験豊かな社員の意見を聞くことは大事だと思うが、なぜそこに労働組合が出てくるのかがわからない。現在のように組織率が低迷し、影響力が弱まっているなら、なおさらである。 内容もほとんどは、労使関係の歴史的分析に割かれており、いかに労働組合が経営方針に影響力を及ぼすかの論述が長く、肝心の「社外取締役よりも経験豊かな社員」といった仮説に対する説得力に欠ける。 やや残念な内容であった。 「社外取締役に議論は集中する。その人たちの人物識見は立派であろう。だが、同業の経験がない。経験があったら、企業秘密を同業他社に知らせるようなものだ。それに、失敗した時の責任は小さい。それにくらべ、従業員が選んだ代表たちならば、それぞれの分野のベテランである。失敗した時には、失業というつらい責任を取らねばならぬ」p1 「経験の深い労働者は、企業の生産性を高める知恵がある」p17 「(予想に反して)多くの先進国は、会社に関心を持つ層は日本よりも多く、日本は少ない」p119 「(労働組合組織率)1977年33.2%、2009年18.1%」p128
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