熊とにんげん の商品レビュー
7つのマリでお手玉をするおじさんと、踊る熊の話。美しい友情物語だけじゃなくて「おいおい人間くんさぁ…」ってなるシーンとか、匂わせる文章とかもある。挿し絵がとても良い!
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
号泣。 読みはじめてすぐに、なんだか悲しい終わり方をするような気がして、ドキドキしながら読んだ。 熊とおじさんの友情が、二人の欲のない生き方が、神様さえ「友達」と思えるような貴さがあまりに美しく、たった一つの音しか出せない角笛の音が自然から妙なる音楽を引き出すように、あり得ないほど(しかし、絶対にないとは言えない)稀だから。 ある意味、その予感は当たっていたけど、外れてもいた。熊もおじさんも決して不幸なことばかりではなかった。辛いこともあったし、ずっと貧しかったけれど、自然に抱かれ、神とともにいることをいつも感じられた。得難い真の友情が死ぬまで続いた。誇りを持って仕事ができた。それを幸せと言わずになんと言うのか。 同時に目先の欲にとらわれ真実が見えなくなっている人間のあさましさも余すところなく描かれている。 原題は「熊と人々」。熊を通して美しかったり、醜かったりする人間たちが描かれている。 今日、新聞で京大の山極先生が、人間に育てられたゴリラを野生に返すことの難しさを書かれていた。人間に育てられたゴリラは森で暮らすようになっても、人間の気配がすると先を争って近づいてくるという。そして、「なぜ自分たちが置いてきぼりにされたのかを訴えているように見えた」と。何となく、この熊と重なって切なくなった。 (動物から豊かな森を奪い、生態系を破壊したのは人間なので、山極先生の提起する問題に関しては、切なくなっている場合ではなく、真剣に早急に対応すべきだと思うけど。)
Posted by
- 1