重箱の隅から読む名場面 の商品レビュー
文学作品は、細部にも注意深く読むと面白い。 こういう筆者の立場に、共感する。 思い込みで読んではいけない、ということも、然り。 芥川龍之介「蜜柑」。 視点人物「私」の真向かいの席に着く少女。 他に誰も客がいないのに、異常では?と、少年時代の筆者は思ったそうだ。 それには、当時の...
文学作品は、細部にも注意深く読むと面白い。 こういう筆者の立場に、共感する。 思い込みで読んではいけない、ということも、然り。 芥川龍之介「蜜柑」。 視点人物「私」の真向かいの席に着く少女。 他に誰も客がいないのに、異常では?と、少年時代の筆者は思ったそうだ。 それには、当時の汽車がボックスシートだという前提が必要。 私自身はここ、何の気なく読んでいたが、言われてみると、確かにそうだな、と思う。 その少女が、沿線で見送る弟たちに蜜柑を放るため、筆者の隣に移ってくる。 筆者は「私」が通路側の席にいたと考えたという。 ならば、そのまま横にスライドすればいいのに、なぜ「私」の側に移ってくるのか?とー。 で、これ、結論は当時の横須賀線はロングシートだった、というオチがつく。 本書は、こんな感じで、細部にこだわることを提案する。 一つだけ、注文を付けるなら、その細部から作品全体の眺めが大きく変わってしまうようなことを、私は期待するのだけど。 それは欲張りすぎですか?
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