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日本人記者の観た赤いロシア の商品レビュー

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2018/04/21

 1917年革命から第二次世界大戦期まで、ロシア・ソ連で直接取材した日本人新聞記者が、革命・内戦や社会主義建設をどのように観察・分析・報道をしていたか、ロシア革命史・ソ連史の展開にそって明らかにしている。取り上げられた記者たちは布施勝治と大庭柯公を除いて初めて名を聞く人ばかりで、...

 1917年革命から第二次世界大戦期まで、ロシア・ソ連で直接取材した日本人新聞記者が、革命・内戦や社会主義建設をどのように観察・分析・報道をしていたか、ロシア革命史・ソ連史の展開にそって明らかにしている。取り上げられた記者たちは布施勝治と大庭柯公を除いて初めて名を聞く人ばかりで、ソ連史の研究で欧米人以外のジャーナリストの著作・記事が用いられること自体が管見では少なく、非常に新鮮だった。単なる紹介ではなく、今日の研究状況に照らして、それぞれの視点や認識の限界(言うまでもなく日ソ双方で検閲がある)を明示する一方、同時代の直接経験だからこその生々しい情報を正当に評価している。  個人的には、独ソ開戦前後にポーランドやソ連に滞在した『毎日新聞』の前芝確三が、日本人のロシア観は文豪のフィクションの翻訳を土台に、マルクス主義の理論と政治的宣伝が加えられたもので、ロシアの現実を反映していないという批判を戦時期の時点で行っているのが印象に残った。現実の冷徹な観察から国家像を導くのではなく、フィクションのイメージやイデオロギー的な偏見から一方的な国家像を形成するという問題は、ロシア観に限らず日本人の外国観全般に言えることで、今日も政治的立場や党派を問わず払拭されているとは到底言い難い。現在にも通用する極めて鋭い指摘であろう。

Posted byブクログ