事例でみる事業承継の実務 の商品レビュー
事業承継に関する顧問先からの様々な相談事例をストーリー形式で解説。税理士、弁護士、司法書士、中小企業診断士など専門家がケースごとに登場しており、それぞれの専門分野から回答しているので参考になる。親族内承継、親族外承継、第三者への売却(M&A)、自主解散(廃業)という章立てで、事業...
事業承継に関する顧問先からの様々な相談事例をストーリー形式で解説。税理士、弁護士、司法書士、中小企業診断士など専門家がケースごとに登場しており、それぞれの専門分野から回答しているので参考になる。親族内承継、親族外承継、第三者への売却(M&A)、自主解散(廃業)という章立てで、事業承継税制(納税猶予)、民法特例の活用(固定合意、除外合意)、企業価値の算定方法、買収監査、組織再編の活用など各論が解説されている。契約書などのひな型が豊富で実務で使えそうだ。事業承継に関与する実務家には必携となりそうな書籍だ。 P169 1経営者の交代と従業員との関係 後継者が役員に入り経営する際に、引き継ぐ会社の労務管理や人事制度を一新する計画を持つ例はよく散見するところです。しかし、親族内承継であっても、旧経営者を慕っている従業員(特に古参の従業員等)との軋轢が生じることも多く、このような従業員をいかに、後継者の経営理念を共有させ、受け入れてもらうかは最重要課題となります。 従業員の信頼獲得のためには、後継者がしっかりと経営していくことで信頼を獲得していくことが重要です。旧体制の労務管理、 人事制度について時代に合ったものにしたいという点はあるかと思いますが、専門家としては、着手するべき優先準備を助言して、経営の初期に、従業員の信頼を獲得していない段階で早急に制度だけを変えてしまうというマイナス作用が生じないよう注意しておくべきでしょう。 P200 営業権の計算 業界によって、独特の営業権の算出方法がある場合があります。例えば、病院は、「1床あたり○百万円」、ベンダーは、「自動販売機1台あたり○万円」、L Pガス会社は、「1世帯あたり○十万円」、タクシー会社も、「タクシー1台あたり○百万円」というように買い手にも売り手にも分かりやすくなっている業界もあります ただし、こういう大まかな計算方法では、その会社の収益性を考慮していないため、安易な方法で営業権を計算するのは要注意です。 営業権には、根拠が必要ですが、営業権の評価について税務上唯一計算方法が記載されている財産評価基本通達165をM&A用に修正して計算するのが、最も根拠としては強いと思われます。 (財産評価基本通達165での営業権の評価) 営業権の価額は、次の算式によって計算した金額によって評価する。 平均利益金額×0.5-標準企業者報酬額-総資産価額x0.05=超過利益金額 超過利益金額×営業権の持続年数(原則として、10年とする。)に応ずる基準年利率による複利年金現価率=営業権の価額 (注)医師、弁護士等のようにその者の技術、手腕又は才能等を主とする事業に係る営難で、その事業者の死亡と共に消滅するものは、評価しない。 (M&A用に修正した営業権の計算例) 役員報酬等修正後経常利益·時価純資産価額× 0.03 ※=超過利益金額 超過利益金額×3年(営業権の持続年数) =営業権の価額 ※長期プライムレートとリスクプレミアムを考慮して決定
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