命の価値 の商品レビュー
読了。やっと片づけて達成感。最近は本を読む「まとまった時間」がないからなぁ。 ◆金銭化できない価値はあれども、費用便益分析が中心的な検討事項というのは確か。(p.51~) そこで、基本的なシナリオ分析(思考実験や二択のアンケートによる試験)を進めながら、時に哲学的領域にも踏み込...
読了。やっと片づけて達成感。最近は本を読む「まとまった時間」がないからなぁ。 ◆金銭化できない価値はあれども、費用便益分析が中心的な検討事項というのは確か。(p.51~) そこで、基本的なシナリオ分析(思考実験や二択のアンケートによる試験)を進めながら、時に哲学的領域にも踏み込みつつ、検討が進む。(P.69~) ◆本書の主題は「命の価値」(Valuing Life)だが、著者も言うように、基本的に、リスクをある程度「低減」するための「支払意思額」を基にしてVSL(生命の統計的価値)が導出される点には、一応注意が必要(つまり100と0の比較ではなく例えば100と90を比べている)。(P.73) その上で、VSLが一般的な数値として得られたとしても例えば高齢者の場合(例えば寿命が数か月のびるだけでも)同じ値にすべきか?等といった問題が生じてくる。(P.76、P.206) ◆加えて、コベネフィット(副次的な影響)や定量化困難な便益の取り扱い方や、費用便益比(B/C)よりも順便益(B-C)のほうが重要ではないかという点、さらには、分配(公正性)についても触れられている。分配のみならず「尊厳」の議論もあり、そうした費用便益分析の外にある論点はもちろん大事。(PP.79,85,86) ただし、本書の力点はむしろ(表題の通り)VSLのほうにある。 ◆VSLはリスクにより、あるいは人により違うはずであり、できる限り「個別化された(=人やリスクにより異なるはずの)VSLが使われるべき」というのが本書の大きな方向性に感じる。 このうちリスクの種類による違いとしては、怯えの有無(例えばガンの苦しみ)や自発性の有無、更には直感的な反発が考えられる。(P.136~) また、人による違いとしては、前述の年齢に加えて、所得や国や人権(による支払意思額)の違いがある。(P.145~)(※こうしたことから、国をまたぐ事業や国の異なる事業間での選択といった取り扱いに、国際機関では特に悩むことになりそうだな、、、) つまるところ、無数のVSLがあるということになるのだ。 ◆VSLを使えば十分なのか、、、支払意思額の選択で、そもそも理性的選考をしていないとか、厚生の選択も主観的かも、とか。又、極めて低確率のカタストロフ的リスクの場合にはカタストロフプレミアムも反映すべきとも指摘。 さらに、生命は本人だけでなく他人にも影響するという点も。 この辺りのことは『最悪のシナリオ』にも結構かぶるけど。強い刺激や感情的描写があると特に強い拒否感がでて確率判断を無にしがち、ということもそう。 ◆その他面白かったこととして、 ○気候変動に関し、炭素の原単位や社会的割引率という(本来行政的にきまる話でそう簡単に変えられべきとサンスティーンが言っているはずの)基礎的な数値を、トランプ政権になって大きく操作されたという、訳者の解説での指摘にはびっくりした。 ○また、「不作為バイアス」(裏切りへの反発からの)(P.214)も、昨今のコロナワクチンへの一部の反応を物語っているとも思った。 ○あとは、排出権取引を巡るサンデルの理論への批判とかも・・・。(P.214~)
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米国政府ホワイトハウス情報規制問題局局長による政府が規制をどのように評価検討しするのか、局内の実態と、発生する問題、幾つかの例示への対応例(2億ドルかかる規制に対して便益がいくらなのか、人命の価値や人権をどう判断するのか?)を説明するもの。 特に後半必ずしも論理的帰結に行き着くと...
米国政府ホワイトハウス情報規制問題局局長による政府が規制をどのように評価検討しするのか、局内の実態と、発生する問題、幾つかの例示への対応例(2億ドルかかる規制に対して便益がいくらなのか、人命の価値や人権をどう判断するのか?)を説明するもの。 特に後半必ずしも論理的帰結に行き着くとは限らない民衆の不安や恐怖への言及も興味深い。 説明は丁寧なのだが、元が法律家だからか文章がやや読みにくいのと、ルール作り側からの視点で個人的には興味を惹くが一般には退屈かも。同著者の『シンプルな政府』の方が一般向けぽい。 一読すれば気づく程度のくだらない誤変換が目につくのが気になる。
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アメリカではレーガン政権の時に、規制影響評価が大統領令で求められるようになったが、その実際の取り組み、考え方について詳細に説明が行われており、極めて参考になる。費用便益評価、カタストロフィックリスクについては特に興味深く読ませていただいた。誤字が多いことに驚いたが、内容が面白いの...
アメリカではレーガン政権の時に、規制影響評価が大統領令で求められるようになったが、その実際の取り組み、考え方について詳細に説明が行われており、極めて参考になる。費用便益評価、カタストロフィックリスクについては特に興味深く読ませていただいた。誤字が多いことに驚いたが、内容が面白いので気にならない。類書はないと思う。
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命の値踏みについて、どう考えるとよいのか。 その出発点として読んでみた。 キーワードは、統計的生命の価値 Value of Statistical Life: VSL だ。 今のところそれは9,000,000ドルと見積もられている。アメリカでは。 それがどんなふうに妥当か、あ...
命の値踏みについて、どう考えるとよいのか。 その出発点として読んでみた。 キーワードは、統計的生命の価値 Value of Statistical Life: VSL だ。 今のところそれは9,000,000ドルと見積もられている。アメリカでは。 それがどんなふうに妥当か、あるいはどのように妥当でないと考え得るのかについての議論が極めて形式的に明快に整理されている。 様々なヒューリスティックスや恐怖によってこの判断が間違って行われてしまう事があることも指摘されている。ただしそのことを冷笑的に扱うのではなく人とはそうしたものだと言うことを冷静に取り扱っている。 ちょっとどうかなと思うくらい誤植がある。「死素敵」(たぶん、質的)だの「拳凍り付く」(たぶん、健康リスク)だの。スとツを打ち間違いやすいんだろうか。
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著者がホワイトハウスで担った規制行政と費用便益分析について語られている。行政に於ける費用便益はその対象の背景が多様な為にどのラインで便益が妥当と考えるのかという判断が難しい。そこに著者は行動経済学の知見を用いて判断しており、そのプロセスは我国ではどういう形をとっているのか?が興味...
著者がホワイトハウスで担った規制行政と費用便益分析について語られている。行政に於ける費用便益はその対象の背景が多様な為にどのラインで便益が妥当と考えるのかという判断が難しい。そこに著者は行動経済学の知見を用いて判断しており、そのプロセスは我国ではどういう形をとっているのか?が興味深い。我国に於ける行政の再配分の判断は不確かな道徳的なバイアスがかかり、機能不全に陥っていると感じているので、こうした知見を活用して欲しい。
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