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移民の政治経済学 の商品レビュー

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2024/10/12

「我々が欲しかったのは労働者だが、来たのは生身の人間だった」 移民が社会(特に経済)に与える影響について、筆者の研究と考えを説明した本です。 2024年10月現在において、某著名経営者の移民に関する発言に端を発して、人口減少し続ける日本では移民に関する議論が益々活発になっていま...

「我々が欲しかったのは労働者だが、来たのは生身の人間だった」 移民が社会(特に経済)に与える影響について、筆者の研究と考えを説明した本です。 2024年10月現在において、某著名経営者の移民に関する発言に端を発して、人口減少し続ける日本では移民に関する議論が益々活発になっていますし、来月に控えるアメリカ大統領選挙でも移民政策は大きな争点です。本書は、多くの国で非常に重要な社会的論点である移民に関して、冷静な分析がなされており、非常に勉強になりました。主な要旨は以下と理解しました。 ————- ① 移民を単なる労働力として議論を進めてはならない。彼らは職場以外での生活があり、彼らの生活全てが受入国の社会に変化をもたらす。 ② 移民を十把一絡げにして社会的影響を論じるのは避けるべき。どこから来たかや元の国での属性が、受け入れ先での行動に影響を与えるため、過去の移民研究が今後の移民を論じる際に有効とは限らない。 ③ 高度な技能を持っていたり、移民先で自身の民族居住地区が小さい場合は、受入国への文化的な同化が早い。その逆も然り。 ④ 高度な技能を持つ移民は、受入国に経済的な恩恵をもたらす可能性が高い。一方で、そうでない移民の受け入れは、経済的利益ではなく、人道的観点から世界への貢献として行われるべきである。 ————- 冒頭の引用でも触れられている①は移民受入れを議論する際、特に重要だと思います。日本においては、人口減少に伴い不足した労働力の補完という観点で論じられがちですが、移民政策の議論をする際は、「生身の人間」の誘致•受入について話している事を肝に銘じるべきだと思います。 本書に一つ細かい注文をつけるなら、分析の表示方法です。様々な移民に関するデータ間の相関が論じられていますが、散布図を見ただけでは相関があるかどうか分かりづらいものもありました。勿論、検証はされているはずなので、目安として決定係数を図に入れてくれれば良かったと思います。

Posted byブクログ

2019/03/06

米国労働経済学専門家による移民の影響に関する本。学術的かつ論理的に意見を述べており、説得力がある。記述が正確。移民とはどのような存在で、国家にどのような影響を与えるかを正確に述べていると思う。移民受け入れが得なのか損なのかは一概には言えず、その影響は複雑であることが、よくわかった...

米国労働経済学専門家による移民の影響に関する本。学術的かつ論理的に意見を述べており、説得力がある。記述が正確。移民とはどのような存在で、国家にどのような影響を与えるかを正確に述べていると思う。移民受け入れが得なのか損なのかは一概には言えず、その影響は複雑であることが、よくわかった。訳もとても良い。いずれにしても、政策というものはいかなるものでも、結局は「いったい、あなたは誰の肩を持つのか」ということなのだと思う。 「(移民の本質)「我々が欲しかったのは労働者だが、来たのは生身の人間だった」p9 「同化しない移民の数が増えれば、多くの難しい課題が発生する」p10 「(外交官の駐車違反)一人当たりの駐車違反が最も多かった5か国は、エジプト、セネガル、パキスタン、コートジボアール、モロッコだ。オーストラリア、コロンビア、日本、ノルウェー、トルコなどの国の外交官は一度も違反をしなかった。各国の外交官の駐車違反の回数の違いを見ると、興味深い傾向が浮かび上がる。社会の腐敗度が高いことで知られる国から来た外交官は駐車違反をし、切符を切られ、罰金を無視する傾向にあるのだ。そうした国からの外交官は、母国の社会では一般的とされているやり方を持ち込み、ニューヨーク市でもそのやり方を引きずっていると解釈するのが自然だ」p42 「移民グループ(母国)の間で収入に差が出るのは、出身国によって移住を決断する人のタイプが異なることが1つの要因となっている」p74 「移民グループの一部で収入が少ないのは、単純に彼らのスキルが足りないからだ。そして、彼らの持っている能力が、米国社会ではそのまま通用することが少ないのだ」p82 「(仲間の少ない移民グループ)私たちはすぐに英語を話さなければならなかったのだ。自分でなんとかしなければならず、そんな風にして自然と早く英語を覚えていった」p95 「(同化の速度)スキルが問題なのだ。教育レベルの高い移民はおそらく、英語を流暢に話せるようになる、労働市場での雇用機会をうまく捉えるようになるなど、容易に新たなスキルを習得する。つまり、移民がすでに習得していたスキルと彼らが将来に習得するスキルの間にはある種の補完関係があるのだ」p98 「単刀直入に言えば、移民グループが1つの地域に集まると彼らの同化は進まない」p100 「20世紀初頭に移住してきた移民に関して言えば、彼らの世代で見られた民族間の格差は孫の世代まで続くことが分かっている」p117 「すべての格差が解消されるまでにはおそらく百年の期間がかかる」p118 「不法移民は不法な立場であるがゆえに、いい存在なのだ(税金は支払うが、健康保険や年金等の社会保障の恩恵にあずかれない)」p179 「シンガポールでは、低技能のサービス労働者を受け入れている企業は、短期ビザのために労働者の月給の2割から3割の税金を政府に毎月払っている」p218

Posted byブクログ

2018/07/30

移民による政治的・経済的影響をよく言われる表面的な見解ではなく、データに基づいた研究結果をまとめた内容。主旨は概ね理解できるが、そこまでに至る考察がなんともまどろっこしいのと、同じようなことが何度も繰り返され冒頭から読み疲れを起こしてしまった。(僕の理解力の問題かもしれないが…)

Posted byブクログ

2018/07/29

データ整理の方法をひたすら議論する本。 勝手な想像だけど、たまたまテーマが「移民」なだけだったのかと思う。それくらい冷静な検討を追えた。 いろんな本を見てると、自由な移動は経済に正の影響を与えると思ってた。 一方で本書では、同じ移動が影響を与える対象によって正にも負にもなること...

データ整理の方法をひたすら議論する本。 勝手な想像だけど、たまたまテーマが「移民」なだけだったのかと思う。それくらい冷静な検討を追えた。 いろんな本を見てると、自由な移動は経済に正の影響を与えると思ってた。 一方で本書では、同じ移動が影響を与える対象によって正にも負にもなることを解き明かす。 改めて、データ整理の難しさを感じた。 細かく書けば書くほどさらなる詳細が気になってしまうジレンマも感じた。どんな影響をどのように除いているのか・・。 やる気にはならないが、当然そこは読者が原論文を追わなければならないところ。 政治としての移民は、感情面含め、いろんな要素が混ざり合う。数字の問題だけで解決するものではないけど、新たな視点を与えてくれる本だった。 経済学は面白いと思う傍ら、物語感が拭えない。 ただ、正しく理解するための正しい根拠の整理方法の追求は、まさしく科学だった。

Posted byブクログ

2018/07/13

著者自身がキューバからの移民であるが、イデオロギーの考えを排除すると移民による経済効果は世の中に吹聴されるほど大きくはないとしている。著者は、移民たちが単なる労働力だけではなく、生身の人間であり社会にとって負担になり得るということを繰り返し述べている。

Posted byブクログ