思想としての近代仏教 の商品レビュー
日本近代の仏教思想にかんする著者の論考を収録している本です。 本書であつかわれている主題は多岐にわたっており、近代における親鸞のリヴァイヴァルに大きな役割を果たした清沢満之、曾我量深、倉田百三のほか、田中智学、鈴木大拙などがとりあげられています。さらに、近代のアカデミズムにおけ...
日本近代の仏教思想にかんする著者の論考を収録している本です。 本書であつかわれている主題は多岐にわたっており、近代における親鸞のリヴァイヴァルに大きな役割を果たした清沢満之、曾我量深、倉田百三のほか、田中智学、鈴木大拙などがとりあげられています。さらに、近代のアカデミズムにおける仏教研究の歩みを概観した論考なども収録されています。 個人的には、家永三郎の『日本思想史に於ける否定の論理』の意義を論じた論文が、興味深く感じました。鎌倉新仏教を近代的な視点から解釈しようとする家永の立場は、本書でも述べられているように黒田俊雄の「顕密体制論」の批判を受けるものであり、さらに著者も指摘するように現世否定と社会的実践との関係が明瞭ではない憾みがあるものですが、日本の近代以降における仏教思想のなかで「否定」がどのようにあつかわれてきたのかということを考えるうえで、ヒントになるような発想が示されているように思います。たとえば、やはり近代の仏教思想を代表する思想家の鈴木大拙が、禅と浄土教によって「日本的霊性」がめざめたと述べていたことも、近代思想における「否定」の論理という主題のもとで考えなおされるべきなのではないかという気がします。
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思想と実践の両面から、代表的知識人の営為に光をあて、また、浄土、日蓮、禅の思想動向を整理。「霊性」「大乗」にも筆を及ばせる
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