九条兼実 の商品レビュー

樋口健太郎(著者)

2022/04/12

以前に読んだ『摂関家の中世』を彷彿とさせるなあと思ったら、著者が同じだった。なーんだ。

晩年の財産処理で、息子の良経に譲って摂関家としての家格を強化するのではなく、娘の宣秋門院に譲ることで女院の仏事執行するための財源強化に充てたのが印象的。

まあ、女院領にしておくほうが先々安全という側面はあったにせよ、近衛家との勢力争いが続く渦中に良経もよく承知したもんだ。さすが道家のオヤジだけあるよなー。

2021/09/27

先に読んだミネルヴァ書房の評伝が人物像に迫る方向性だったのに対し、こちらは歴史上の文脈の中で果たした役割を表そうとしている印象。皇嘉門院の跡継ぎとする視点や、摂関家分立の画期を示す記述も興味深い。