マタ・ハリ伝 の商品レビュー

サム・ワーヘナー(著者),井上篤夫(訳者)

2024/04/11

　マタ・ハリとは何者だったのか？　フィクションでは女スパイの代名詞のように紹介されるが、本書を読んだ限りスパイとしては三流どころか失格である。
　見栄張りの父親の影響を受けた派手好きで贅沢好きな性格と金銭欲、事実と虚構を織り交ぜて作り話を幾つも披露できる才能、“制服”への憧れからきた多くの軍人との交際－－「女スパイ」像を創り出す契機と材料の半分は、戦時下であろうと自粛しないほど立ち居振る舞いが目立つ彼女自身が与えたと言えよう。なんとも滑稽で、哀れな生涯だ。