オールド・テロリスト の商品レビュー
ー 誰もが生き方を選べるわけではない。上位の他人の指示がなければ生きられない若者のほうが圧倒的に多く、それは太古の昔から変わらない。それなのに、現代においては、ほとんどすべての若者が、誰もが人生を選ぶことができるかのような幻想を吹き込まれながら育つ。かといって、人生を選ぶためには...
ー 誰もが生き方を選べるわけではない。上位の他人の指示がなければ生きられない若者のほうが圧倒的に多く、それは太古の昔から変わらない。それなのに、現代においては、ほとんどすべての若者が、誰もが人生を選ぶことができるかのような幻想を吹き込まれながら育つ。かといって、人生を選ぶためにはどうすればいいか、誰も教えない。人生は選ぶべきものだと諭す大人たちの大半も、実際は奴隷として他人の指示にしたがって生きてきただけなので、どうすれば人生を選べるのか、何を目指すべきなのか、どんな能力が必要なのか、具体的なことは何も教えることができない。 したがって、優れた頭脳を持ち、才能に目覚め、それを活かす教育環境にも恵まれ、訓練を自らに課した数パーセントの若者以外は、生き方を選ぶことなどできるわけがないし、生き方を選ぶということがどういうことなのかさえわからない。そういった若者にとって、人生は苦痛に充ちたものとならざるを得ない。苦痛だと気づいた者は病を引き寄せるし、気づかない者は、苦痛を苦痛と感じないような考え方や行動様式を覚える。同じような境遇の人間たちが作る群れに身を寄せ、真実から目を背けるのだ。 病を引き寄せる若者のほうが、誠実であるのは言うまでもない。気づかない者でも、あるとき突然真実に目覚めることがある。突然の目覚めによる苦痛は耐えがたいから、新興宗教に逃げ込む者も多いし、死を意識し、死を望む者もあとを絶たない。 ー なんというか、村上龍の作品の質が落ちたのか、私が村上龍を楽しめない人間になってしまったのか。 恐らく後者なんだろうと思うけど、それはきっとこの主人公にまったく共感できす、リアリティを感じられなかったからなんだろう。 それは、職を失うショックを感じたことがないからか、家族が去っていく体験をしたことがないからか、精神を崩壊させたことがないからか、テロに遭遇したことがないからか、とにかく主人公の悩み、逡巡、怒り、恐怖、戸惑いが理解出来ない。 ただし、「この理解出来ない」というのが重要で、なぜなら本作は、これを理解出来ないやつらを批判した作品なのだから、あぁ、自分は批判対象側にいるんだな、ということに気付かされる作品。
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圧倒的臨場感。映画を見ているようだった。老人たちの迫力。そして、正論に翻弄されながら進むストーリー展開。ページ数は多いですが、飽きることなく読まされしまう村上さんのストーリー展開のうまさを感じた。
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表紙の感じからは想像もつかないほど現代日本が抱える闇、若者の将来、これからの日本についてこれでもかというほど濃い内容に仕上がった一冊。 半分ホームレスのようなジャーナリストが1つのテロをきっかけにその裏で暗躍するオールドテロリスト達の正体に迫っていく過程は本当に読み応えがありまし...
表紙の感じからは想像もつかないほど現代日本が抱える闇、若者の将来、これからの日本についてこれでもかというほど濃い内容に仕上がった一冊。 半分ホームレスのようなジャーナリストが1つのテロをきっかけにその裏で暗躍するオールドテロリスト達の正体に迫っていく過程は本当に読み応えがありました! その後が気になる作品。
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すごく面白かった。要素は村上春樹さんの小説に似てると思ったけど、展開は違う。 生々しい。 最後に出てくる、女性が参加してない二つ目の理由、気になるなあ。
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オールド・テロリスト。村上 龍先生の著書。社会を正しい方向に変えようとするオールド・テロリスト。テロ行為は間違っているしテロリストの存在が肯定されるわけではないけれど信念を持って社会を良くしようと思って行動するテロリストの全てが否定されるのもおかしいのかな。テロリストは若い人が多...
オールド・テロリスト。村上 龍先生の著書。社会を正しい方向に変えようとするオールド・テロリスト。テロ行為は間違っているしテロリストの存在が肯定されるわけではないけれど信念を持って社会を良くしようと思って行動するテロリストの全てが否定されるのもおかしいのかな。テロリストは若い人が多くてテロリストはヤング・テロリストというのが普通の人の印象。でも高齢化社会でオールド・テロリストが増えても不思議ではないこと。村上 龍先生ならではの世界観に惹きこまれます。
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インタビューで聞いたかのようなリアリティのある小話が随所に盛り込まれる 大きな物語と小さな物語の2つの流れ この作者が発明した小説技法は 模倣しやすいのでは
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怒れる老人達が 今の日本に対して テロをしてしまうという話です。 フィクションですが ありえそうな話で ドキドキしながら 読みました。 最近の本のような 時間が前後したり 目線を それぞれの人に変えたりしていない 書き方なのでとても読みやすかったです。 少し性的描写につい...
怒れる老人達が 今の日本に対して テロをしてしまうという話です。 フィクションですが ありえそうな話で ドキドキしながら 読みました。 最近の本のような 時間が前後したり 目線を それぞれの人に変えたりしていない 書き方なのでとても読みやすかったです。 少し性的描写についていけない部分もありましたが、 まぁ そういう部分があるからこういう人物なんだなぁと納得して読みました。 これを読んで 高齢者の方々がどう思うか? あるいは 若い人達が 自分達もがんばらねばと思うか? テンポが良いので 読みやすかったです。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
希望の国のエクソダスからの流れで読みました。題名そのままにテロが行われるのでなかなか生々しい描画が多く、しかもストーリーのほとんどが主人公の心の内面描写なので入り込むとやや鬱なかんじになりますが、後半の一気に伏線回収し突き進むあたりからは引き込まれました。カツラギの言葉がなんだか自分にまでグサグサ刺さりました。
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「満洲国の人間」を名乗る老人からのNHK爆破予告電話をきっかけに、元週刊誌記者セキグチは巨大なテロ計画へと巻き込まれていく。暴走を始めたオールド・テロリストたちを食い止める使命を与えられたセキグチを待つものは!?横溢する破壊衝動と清々しさ。これぞ村上龍と唸るほかない、唯一無比の長...
「満洲国の人間」を名乗る老人からのNHK爆破予告電話をきっかけに、元週刊誌記者セキグチは巨大なテロ計画へと巻き込まれていく。暴走を始めたオールド・テロリストたちを食い止める使命を与えられたセキグチを待つものは!?横溢する破壊衝動と清々しさ。これぞ村上龍と唸るほかない、唯一無比の長篇。
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相変わらず何かが破壊されていく過程を描写させたら随一の凄みがあった。 特に意識がぐしゃぐしゃになってく過程。 社会に対する怒りや叱咤という激しいものよりもなんとなく投げやりというか、村上龍本人のがっかり感みたいなものが伝わってきて項垂れるこの感じ。 あんまり意識したくないこと、...
相変わらず何かが破壊されていく過程を描写させたら随一の凄みがあった。 特に意識がぐしゃぐしゃになってく過程。 社会に対する怒りや叱咤という激しいものよりもなんとなく投げやりというか、村上龍本人のがっかり感みたいなものが伝わってきて項垂れるこの感じ。 あんまり意識したくないこと、知りたくなかったこととか、改めて突きつけられてあーあーという感じ。 出来ることなら関わりたくないっていう諸問題がある。今なんか特にある。 だけど一つだけ前向きなメッセージのように感じたところがあって、甘えてたって何にもならないだろう?ってこと。自分の機嫌は自分が取るしかないだろう? この小説で描かれるほど今の若者たちが元気もなくて自分を見つけられない存在だとは思えないけど、知らないだけかもしれないし、僕がまだ微妙にそっちに属してるから擁護したいだけなのかもしれないし、村上龍がおじいさんに寄りすぎてるだけなのかもしれないし。ただ、これもできる限り覚えていよう。
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