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越えてくる者、迎えいれる者 脱北作家・韓国作家共同小説集 の商品レビュー

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2018/10/22

タイトルの通り、越えてくる者(脱北者)と迎えいれる者(韓国人)が脱北者や分断など、南北の問題をテーマに書いた短編集。 最近、脱北者による小説が少しずつ出てきている。 脱北者であれば、小説という形を取らずに自分の経験を書いて欲しい、と思っていた。小説という形にすることになんの意味...

タイトルの通り、越えてくる者(脱北者)と迎えいれる者(韓国人)が脱北者や分断など、南北の問題をテーマに書いた短編集。 最近、脱北者による小説が少しずつ出てきている。 脱北者であれば、小説という形を取らずに自分の経験を書いて欲しい、と思っていた。小説という形にすることになんの意味があるのだろうかと。 しかし、少なからず脱北者の手記を読んで思う。 彼らは生きるためとはいえ、公にはできない事情を持っている場合が、あるのだと思う。特に韓国に来て、そこで暮らす際にはそうした過去が彼らの新生活の足を引っ張ることがあるかもしれない。 そうした、人には言えない過去や事情といったものは、もしかすると「小説」という形でなら発表できる、という側面があるのかもしれない。 一方、韓国に暮らす脱北者が3万人を越えた現在の韓国では、以前とは違って脱北者に無関心だ。 韓国人にも自分の生活があるのだから仕方ないことだ。 とはいえ、脱北者が「あらかじめやってきた統一」と呼ばれるように、脱北者の韓国定着の問題は現在だけでなく未来の問題でもある。 同書は、前半に脱北者による小説、後半に韓国人作家の小説が収められている。 文章はつたないが生々しい「生」が感じられる脱北者の小説と、「分断」はすでに遠い過去のものであるかのように「諦観」が強調されているような韓国人作家の小説――この対照的な雰囲気がもう一つの「分断」の形なのだろうと、思った。

Posted byブクログ