欲望する「ことば」 の商品レビュー
マーケティングについて学術的な観点をまじえながら解説するが、少しでも言語学をかじったことがあると、当り前のことばかりが書かれているように感じる。 哲学などの人文学を役に立つ/立たないの文脈で語ること自体が不毛なことであるが、あえてその二元論を用いれば本書は人文学が「役に立つ」こと...
マーケティングについて学術的な観点をまじえながら解説するが、少しでも言語学をかじったことがあると、当り前のことばかりが書かれているように感じる。 哲学などの人文学を役に立つ/立たないの文脈で語ること自体が不毛なことであるが、あえてその二元論を用いれば本書は人文学が「役に立つ」ことをあらためて証明したということになるだろう。 ただいくつかおもしろい発見はあって、たとえば社会記号の生成に雑誌が大きな貢献を果たしていることなどは興味深く読んだ。 あ、あとAIは過去や現在のデータから消費者の傾向を探ることはできるけど、真のインサイトを発見して次のブームを生むことはできないっていうのはなるほどとおもった、けど、さらなる細かいデータの蓄積・分析が可能になると些細な変化すらも探知して次のブームを予測できるようになるんじゃなかろうかとも感じる。
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社会記号とは、世の中に新しく生まれたニーズや欲望を捉えて言語化したもので、それが定着することで一般名称となり、新たな文化や大きな市場を創造することがある。そのため「社会記号についての知識や理解は、マーケターや広報担当者、それに商品開発者には欠かせない」と著者の嶋浩一郎氏は述べる。 共著者でマーケティング研究者の松井剛氏は、聞き慣れた「加齢臭」「女子力」「癒し」などを例に、これらの社会記号の成立・変遷・市場形成(いつどこで生まれたか・どのように意味や使われ方が変化したか・どのような関連商品が生まれたか)などを説く。これらはマーケティング従事者でなくても気軽に、かつ興味深く読める。しかし第三章以降は内容が学術的になり、言語学や社会科学からの引用著述も説明不足で、誰に向けて何を書こうとしているのかがよく判らない。 一方、嶋氏が語るのは社会記号だけでなく、生活者インサイト発見の方法やメディアとの向き合い方など、これまでインタビューや講演などで氏が提唱してきたことを本書で一冊にまとめた観がある。例えば「ひとが気づいていないことに気づくことがビジネスでは有効」「顧客が欲しいものを先回りして探すところに商機を見出す」「街の中からインサイトを発見する」「雑誌は新しい欲望を発見させるもの」というようなことだ。マーケティングに従事する、あるいは興味のある人には一読の価値ある「嶋氏の思考を知る」一冊である。 #欲望する「ことば」 #NetGalleyJP
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