写真集 border｜korea の商品レビュー

菱田雄介(著者)

2018/05/23

北朝鮮と韓国で撮った似たような構図の写真を左右に並べて見せる写真集だ。

どちらが韓国で、どちらが北朝鮮か、写真を見た瞬間に区別するのは難しい。背景の細々した情報が読み取れない写真では、どっちがどっちだかわからないほど似通っている。
もちろん、よく見れば違う。
北朝鮮の異様に暗い夜景、人々の左胸についている赤いバッジ。それらは確かに異様だ。しかし、同じ民族である南北の人々は極めて似通った顔つきで写真の中からこちらを注視している。

そんな彼らは38度線（border）で対峙している。
内戦を経験して、一部の年配の人々は互いを激しく憎悪しているだろう。一方で、北朝鮮を「祖国の一部」だと考える韓国の若者はさほど多くないのではないか。
38度線は、憎しみと無関心が対峙する境界線でもある。
長期間に渡る分断で、話し方も、話す単語も文法も、食生活も文化も・・・様々なことに隔たりが出来てしまった。境界線の北に住むか、南に住むかで享受できる生活は天と地ほども隔たりがある。

「統一」は甘く、幸せな幻想だ。
幻想が現実になる可能性はさほど高くないし、また幻想が現実になったところで甘い幻想のままでいることはできないだろう。
われわれにできるのは、ただ、隣国がそのような状態にあるということを認識することだけ、かもしれない。