瓶詰地獄 の商品レビュー
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何だか切なくて、可哀想な話だと思った。 せっかく海難事故から逃れて、兄妹2人、南国の楽園のような島にたどり着いて生きながらえたのに、聖書という書物があったからゆえに、ある意味その地で生きるには不要な知識を植え付けられてしまい、悩み苦しむことになってしまったのだ。 聖書を読んでいなければ、一般的な世界でタブーと言われることは起こってしまったかもしれないが、2人とも、そこまで深刻に思い悩むこともなく、楽しい人生を送れたのではないか。二度と元の社会へ戻れないのであれば、今いる土地で幸せに生きられる道を模索することの方が、ずっと良いのではないか、と考えさせられた。 色々な解釈ができると思うのだが、私は、第二の瓶の内容を書いた時点では、2人は肉体的魅力に翻弄されつつも、プラトニックラブの範疇でいられていると解釈した。兄妹とはいえ、男女の肉体美に囚われて、性的に惹かれてしまうことは、そんなにいけないことなのだろうか。聖書を熟知していない私は、この2人は信心深くて偉いなぁと少し不思議に思いつつも感心してしまった。 この本のように、知らなければもっと身軽に、気軽にできることって、世の中にはたくさんあるのだと思う。その人のより良い生き方にとって、足枷となる考え方が、何食わぬ顔でそこら中にゴロゴロ転がっているような気がして、自らを縛りつけている人間の思想とか常識とかが、少し恐ろしくなった。 罪の意識を持って、自戒することは、時と場合によって必要なのかもしれないけれど、いつか死ぬと分かっているこの命を全うする中では、いつまでも自分は罰せられるべき人間と思っていないで、いつか自分を赦してあげるときがきてもいいのではないか。そのほうが楽に生きられるし、前向きに生きて何かいいものを生み出せた方が、生まれてきた甲斐はあるのではないかと、私は思ってしまう。 だから、ここまで思い悩んで苦しんでいる2人を見て、いたたまれない気持ちになった。もう、仕方がないんだから、楽しく生きれる考え方で生きていいんだよ、と言ってあげたい。 夢野久作の作品は、初めて読んだと思うが、初見で読んだだけでは理解できないところも多く、考えさせられてとても面白かった。文章もキレイだし、他の作品も読んでみたい。イラストも悩ましい様子が表現されていて、世界に入り込むことができた。 やっぱり、乙女の本棚シリーズ、最高! シリーズ制覇できるように頑張ろうと思う。
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日本の推理小説三大奇書の著者のひとり、夢野久作の名作を「刀剣乱舞」のキャラクターデザインなどで知られるホノジロトヲジ氏の素敵なイラストと共に楽しめます。 3通の手紙に綴られていたのは地獄への誘いか、それとも・・・どう思うかは読んだ人にしか分かりませんよ!! 映像学科4年
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南の島に漂着した少年少女の兄妹の物語。 島に閉じ込められたことと、瓶の中に物語を閉じ込めたことが掛かっているのかな? 兄妹で愛し合ってしまったと憂いている内容で、挿絵も美しいのだけど、本当はロビンソン・クルーソーのような格好だったんだろうなあ。
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「乙女の本棚」というシリーズで、文豪の名作に人気イラストレーターがイラストをつけた、大人向けの絵本シリーズらしいです。 恥ずかしながら、夢野久作はドグラマグラしか知らず、この「瓶詰地獄」を読んだことがなかったので、「えっこれだけ?抜粋版なのかな?」と思ってしまいました… (後で...
「乙女の本棚」というシリーズで、文豪の名作に人気イラストレーターがイラストをつけた、大人向けの絵本シリーズらしいです。 恥ずかしながら、夢野久作はドグラマグラしか知らず、この「瓶詰地獄」を読んだことがなかったので、「えっこれだけ?抜粋版なのかな?」と思ってしまいました… (後で元のを読みましたが、元々短いお話でした) 絵が綺麗です。 このホノジロ・トウジさんというイラストレーターの方は「刀剣乱舞」のイラストレーターもしてらっしゃるとのこと。 ちょっと夢野久作の作品に充てるには美化しすぎな気もしましたが、それはそれでいいんじゃないかと。 ただ話の内容と絵が合ってない細かい部分があったのでそれだけ少し気になりました。 この後、普通に文字だけの「瓶詰地獄」買ったんですが、やっぱり手に取りやすいのはこちらの方ですね。 こういうのをきっかけにして、文学がどんどん普及していったら嬉しいです。
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この美しい、楽しい島はもうスッカリ地獄です。 浜辺に流れ着いた3通の手紙。そこには、遭難した兄妹の無人島での生活が綴られていた。
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夢野久作の「瓶詰の地獄」…。 瓶詰にされた地獄で起こったような話ともとれるけど、二人きり瓶詰にされたような行き場のない、窒息しそうな、そんな地獄ともとれるのかもしれない…。 結局、兄が狂ってしまったのか、妹もまた狂ってしまったのか、この話自体が狂人の戯言だという創作なのか…。 ...
夢野久作の「瓶詰の地獄」…。 瓶詰にされた地獄で起こったような話ともとれるけど、二人きり瓶詰にされたような行き場のない、窒息しそうな、そんな地獄ともとれるのかもしれない…。 結局、兄が狂ってしまったのか、妹もまた狂ってしまったのか、この話自体が狂人の戯言だという創作なのか…。 ホノジロトヲジ氏の絵がまた、雰囲気があってダークでイノセントで合ってるんだな…。
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イラストはイラストで好きなのだが、本作には合わなかったように思う。独特の解釈のイラストもあり頑張っているのは伝わるのだが、どうしても涼しさを感じてしまう。 おそらく色味のせいだろう。 アヤ子が泣く場面ではウミガメや卵があるのは良いが、彼女自身は空色で、爽やかさを感じてしまう。最後...
イラストはイラストで好きなのだが、本作には合わなかったように思う。独特の解釈のイラストもあり頑張っているのは伝わるのだが、どうしても涼しさを感じてしまう。 おそらく色味のせいだろう。 アヤ子が泣く場面ではウミガメや卵があるのは良いが、彼女自身は空色で、爽やかさを感じてしまう。最後の絵もごちゃごちゃしすぎている。 妹から女を感じるという絵は赤茶色い色だったので、その絵だけは妖艶に感じられた。 最初のビール瓶の絵が三本以上あるのが謎すぎる。 島での生活についての説明の後にドーンと2ページに跨ぐ黒背景の1枚絵があるが、これが1番何を伝えたいのかよく分からない。 その次のページにしても、ヤバン人のように裸体になってしまったと書いてあるのにきっちり服を着た絵が横にあって首を傾げる。 どうにも私は夢野久作に小綺麗さを求めていないので、解釈が合わなかった。 第一の瓶はドグラ・マグラの妹を思い出す。 話の終わり方が呆気なかった。
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いつだって、二人きり、二人だけが暮らす世界というものは、歪むというのか、美しいというのか、とても特殊な環境にならざるを得ない。二人が男女なら尚更……その環境内において、相手に対して覚える嬉しさや盛り上がってくる気持ちと、背徳感のような、後ろめたさのような、虚しい気持ちと。そして気持ちがいっぱいになったら縋るのは、神様という とても究極的な世界観だと思いました。(ちょうど今、愛することについて学んでいて、その中で神話からの引用がとても多いので、そういう事を思いつくのだと思います。)個人的にはとても好きです。
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私の好きな書簡形式でした。 ただ、最後まで読んでも、?という感じで、ネットの考察を読んで、ほ〜!という感じです。 奥が深く、あれはこういうことかな?といろいろ想像できるのが面白いです。
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タイトルに惹かれて借りた乙女シリーーーズ。 瓶だけに。 なんとなく「魍魎の匣」みたいにぎっしり何かが瓶に詰まってるグロい展開を期待したんですが、あにはからんや耽美でした。 そうきたか。 そうなるの? なんでやねん??? って感じ。
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