動的平衡(3) の商品レビュー
「動的平衡」シリーズの3作目だか、前の2冊よりも専門的な用語が多く、図版は少なく、やや読みづらさを感じた。 腸内細菌のことを扱った第10章が面白かった。
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動的平衡2と比較するとエッセイ的要素が強く感じるが、でも、やはりいい。美しい。 「動的平衡」を体現しているような、静的に見えて、心地良く絶え間ないゆらぎを感じるような文章。水のような透明感。 まず前書きからやられた。 私の中で最近モヤモヤしていた、「YouTube VS 本」問...
動的平衡2と比較するとエッセイ的要素が強く感じるが、でも、やはりいい。美しい。 「動的平衡」を体現しているような、静的に見えて、心地良く絶え間ないゆらぎを感じるような文章。水のような透明感。 まず前書きからやられた。 私の中で最近モヤモヤしていた、「YouTube VS 本」問題をあっさり解決してくれた。 (YouTube VS 本問題とは、YouTubeで(しかも2倍速)本のまとめ動画をサクッと観て知識をインプットしていく夫を横目で見ながら、じっくり本派のわたしは負けたような気になり、本の方がいいと思うのは過去への固執なんだろうか?ただの自己満足なんだろうか?と、モヤモヤしていたコトである) インターネットの情報に欠けているもの、本で得られるもの。 それは、プロセスの体験である。 その答えに到達するまでの時間の経緯であり、時間軸である。 プロセスをたどって答えに到達しないと、そこに至る喜びが味わえないのはもちろん、その答えを本当に理解したことにもならないと思う。 これが、「教養」と「物知り」の違いにもつながるのだという。 終盤に、筆者はスティーブ・ジョブズの講演から「connecting the dots」という言葉を引用している。カリグラフィーの授業にハマったことで、後々多くの人々を魅力する「マック・フォント」が出来たように、人生何が後々大きな達成、意外な発見につながるかはわからない。いろんな知識を得て、いろんな経験をしよう、という学生への激励メッセージなのだ。 様々な経験が、この本の副題であるChance favors prepared mind、大きなことを成し遂げる人が持つ、「準備された心」のバックグラウンドの形成にも大きく寄与するものとなるのだ。 また、そんな筆者が定義する「プロフェッショナル」があるという。 天賦の才能の有無以前に、プロフェッショナルはある時間を共有している。 一万時間。 どんな世界であっても、彼らは幼少期を起点として少なくとも一万時間、例外なくそのことだけに集中し、たゆまぬ努力をしているという。(一万時間=一日三時間×10年) 東京オリンピックが盛り上がる中、そんなプロフェッショナルたちに心から敬意を表したい。
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「動的平衡」概念にもとづくエッセイ集のようなものの第三弾。 組織論や芸術論にまで広がるということで書店ですぐ購入した。企業のような組織は、確かにエントロピー=乱雑さの増大の法則に支配され、これに抗っている。ここから、社長論やリーダーシップ論にもつながる。もう一冊読んでいる吉越...
「動的平衡」概念にもとづくエッセイ集のようなものの第三弾。 組織論や芸術論にまで広がるということで書店ですぐ購入した。企業のような組織は、確かにエントロピー=乱雑さの増大の法則に支配され、これに抗っている。ここから、社長論やリーダーシップ論にもつながる。もう一冊読んでいる吉越元トリンプ社長の話がとてもよいのだが、社長の役割は、確かにエントロピー増大との闘いに勝つことだ。 ・動的平衡組織論 ・水について考える ・老化とは何か ・科学はなぜ捏造するのか ・記憶の設計図 ・遺伝子をつかまえて ・「がんと生きる」を考える ・動的平衡芸術論 ・チャンスは準備された心にのみ降り立つ ・微生物の狩人 動的平衡的な考え方として重要なのは、、、 ・エントロピーは増大する ・生き物は、エントロピーの増大にあらがっている ・記憶も更新される ・つくるより壊すことが大事 ・タンパク質は、炭水化物のように燃やすために取り込むのではない p39 ・ひとつの細胞の分裂からはじまった細胞の集合体の内部で、細胞に個性が出てくること、細胞が機能を分担して分業化すること、これを「分化」と呼ぶ。 ・多細胞生物の細胞が共有している遺伝子とは、受精卵に由来するゲノムDNAのことで、細胞内の核という小区画に折りたたまれて格納されている。 p46 ・早老症では、DNA修復システムの一部に問題が生じ、この仕組みがうまく働かないのである。・・・必死にアンチエージングを行っても、結果的にエントロピー増大の法則という名の風化作用に、徐々に負けていくプロセス、それが老化なのである。 p70 ・海馬で作られた記憶の回路は、大脳皮質に書き写され、ここで新しいニューロンとシナプスの回路が形成される。そして海馬の方はクリアされる。 p170 ・この世界のあらゆる要素は、互いに連関し、すべてが一対多の関係で繋がりあっている。つまり世界にも、身体にも本来、部分(パーツ)はない。部分と呼び、部分として切り出せるものもない。世界のあらゆる因子は、互いに他を律し、あるいは相補している。そのやりとりには、ある瞬間だけ捉えてみると、供し手と受け手があるように見える。しかし、その微分を解き、次の瞬間を見ると、原因と結果は逆転している。あるいは、また別の平衡を求めて動いている。(・・・仏教的世界観)
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生命とは動的平衡、「絶え間ない分解と更新と交換の流れにより、エントロピー増大の法則に対峙して生命の秩序を維持する仕組み」ということを説くシリーズの第3段。著者の独特の語り口が生命の不思議な世界に誘ってくれる。
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とにかく福岡伸一さんの文章が好き。時折はっとさせられるほど美しい言い回しに出会って胸打たれる。ただ、この感動は第一作が一番大きかったような。 今作は寄稿エッセイの再構成版ということで、同じ話が再三登場したり、全体を貫くストーリーには欠けるように感じられた。 サブタイトルにもなっ...
とにかく福岡伸一さんの文章が好き。時折はっとさせられるほど美しい言い回しに出会って胸打たれる。ただ、この感動は第一作が一番大きかったような。 今作は寄稿エッセイの再構成版ということで、同じ話が再三登場したり、全体を貫くストーリーには欠けるように感じられた。 サブタイトルにもなっている「チャンスは準備された心にのみ降り立つ」のエピソードが最も気に入った。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
動的平衡シリーズ 最新作 過去2作とも読みましたが、複雑な科学の新発見やIPS細胞やDNAなどの知ってるようで意外と理解できていないことを分かりやすく説明されているので色んなものの見方が変わります。 <今回の発見> 人間の細胞は常に破壊と再生を繰り返している。食べ物を摂取すると炭水化物はエネルギーに使われるがたんぱく質はアミノ酸に分解され、細胞の再生に使われる。体は食べたものでできている。 小保方さんの騒動で有名になったSTAP細胞。細胞の再生が可能となるIPS細胞を簡易に精製できるというのがSTAP細胞。もし本当に新発見であれば医学の大きな発展だった。 人は何かの物事を理解しようと際、その瞬間を切り取って分解、整理して理解しようとするが、物事は常に動きながら変化している(動的平衡)ので、その状態から理解する必要がある。
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動的平衡 この世界のあらゆる要素は、互いに連関し、全てが1対多の関係で繋がりあっている。体にも本来パーツ(部分)はない。そのやりとりはある瞬間を捉えると、供し手と受け手があるように見えるが、次の瞬間には原因と結果は逆転していたり、別の平衡を求めて動いている。本当の意味での因果関...
動的平衡 この世界のあらゆる要素は、互いに連関し、全てが1対多の関係で繋がりあっている。体にも本来パーツ(部分)はない。そのやりとりはある瞬間を捉えると、供し手と受け手があるように見えるが、次の瞬間には原因と結果は逆転していたり、別の平衡を求めて動いている。本当の意味での因果関係はこの世界にはない。そこにあるのは動的平衡だ。 この本では動的平衡について考えさせられる話が登場する。知識としても有益だし、話としてもおもしろい。 以下メモ ◯老化の話 ・早老病を引き起こす遺伝子は、ウェエルナー症候群でもコケイン症候群でもDNAの修復に関わる仕組みだった。 DNA複製時に日本の鎖の噛み合わせが悪いところ発見する仕組みのこと。 ◯再生医療の話 ・ES細胞: 受精卵を破壊して作る。他人から移植する必要があり拒否反応が出る。倫理的にも問題。 ・iPS細胞: 分化した細胞に特定の遺伝子を注入すると、未分化の状態に戻せる。 ・STAP細胞: 分化した細胞を弱い酸性の液につけると、未分化の状態に戻せる。 ◯記憶の遺伝 ・ある条件によりある行動をするという回路自体は遺伝子ないが、その条件付けが容易に形成される下地は遺伝子する。 ◯オートファジー研究の意義 ・生命とは何か、それは、生命はつくることよりも、壊すことを一生懸命行なっている、ということ。生命の動的平衡を維持するため。 ・秩序あるものは秩序が乱れる方向に動く。エントロピー増大の法則により、常に酸化、変性、老廃物が発生する。これを絶え間なく排除し、新しい秩序を作る、このバランスと流れが必要。 ・オートファジーとは、自食作用。 ◯ガン ・悪性のガンは気付いた時には全身に転移しており、外科的に取り除くことはほぼ不可能。 ・免疫細胞は、本来ならばガンの予備軍を見つけて排除できる。しかしガンが持つサイトカインが発する信号が免疫細胞を騙して味方にし、逆に防御壁として利用してしまう。 ・一箇所のガンの病巣を超音波で焼くことで、この病巣を壊した時に、免疫細胞が初めてガンの存在を認識し、免疫細胞の動きが急拡大、身体中のガンを総攻撃した例がある。 ・動的平衡の観点からは、予め体に備わった味方の力の活用このに活路があると思う。 ◯音楽 ・音楽から感得するリズムは、まさに自分自身の呼吸と脈動の起伏そのもの。生命はリズムの循環に支配され、駆動されている。音楽とは生命のメトロノームなのだ。 ◯抗生物質 ・人類の脅威、感染症に、対抗する最大の革命の一つ。 ◯腸内細菌 ・ウンチには内外の雑多なDNAが混在していて解析は極めて困難だった。 ・ヒトゲノムが解読され、消耗が激しい消化管表面の細胞のDNAがわかり、家畜や主要穀物といった人間に有用な生物ゲノムもどんどん解析され、残ったDNAが腸内細菌だとわかった。 ・100兆匹の腸内細菌が住んでおり、人の細胞数37兆個より遥かに多い。 ・胎児の状態ではゼロで生後外界から入ってきて、身体との平衡点が作られる。 ・腸内細菌は宿主が摂取した食物をかすめ取るが、それ以上に貢献している。繊維分を代謝して栄養に変え、必須アミノ酸やビタミンを合成し、供給。腸内細菌がいないと、臓器に異常をきたし、カロリーを30%多く消費する。 ◯クワシオコア ・途上国で見られるガリガリなのにお腹の出た子 ・栄養失調(タンパク質不足)な中で炭水化物を取っているため、脂肪を体内で循環させるタンパク質が無く、肝臓に脂肪が蓄積され肥大化することによる。
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そもそも理数系が苦手なのに、読み物にされると読んでしまうという「無い物ねだり」の癖のせいで、読み続けている自然科学系の本。もちろん、福岡さんの「動的平衡」シリーズはその最たるモノ。 あくまで読み物なので、楽しむのが一番だと思いつつ、ついつい脳神経細胞が余計な回路をつないで、もっと...
そもそも理数系が苦手なのに、読み物にされると読んでしまうという「無い物ねだり」の癖のせいで、読み続けている自然科学系の本。もちろん、福岡さんの「動的平衡」シリーズはその最たるモノ。 あくまで読み物なので、楽しむのが一番だと思いつつ、ついつい脳神経細胞が余計な回路をつないで、もっと詳しい話を聞いてみたい、もう少し専門的な事柄を知りたいと図に乗ってしまうから、恩恵を受けているにもかかわらず、エッセイという形態が物足りなくなってくる。まさしく、著者が区別していた「知識」と「物知り」でいうところの後者になりたがる自分がいるのである。社会と図画工作だけが取り柄のくせに、「エントロピー増大の法則」に大いに同意して、事ある毎にそんな小理屈を口にするのはその典型。四則演算も危ういのだけれど、フェメール好きの科学者が唱える「動的平衡」もまた、とても受け売りしたいネタなのだ。いや、正直なところ、明快な証明もロジックも何も出来ないけれど、自分は「動的平衡」を信じている。というか「信仰」している。 なんとドクターとは「ケビン・ベーコン指数」が、わずか2なのである。今もつきあってもらっている私のメンターは、彼とかつて一緒に音楽祭へ出かけたと聞き、一方で編集者とは、かつて仕事をさせていただいた。その縁だと思うが、お世話になったお客さんがこの本に登場しているのには驚いてしまった。 オカルトではないが、個人的にも世界的にも何かあるような気がする「動的平衡」なのである。
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雑誌連載をまとめている第3弾だが、終盤加速する文章の構成が上手いと毎回感嘆する。あまりに膨大な知識をとても分かりやすく紡ぎ上げていく言葉にワクワクさせてくれます。生きることが楽しくなる彼のライフワークともいえる著作。
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