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西郷隆盛 その生涯 の商品レビュー

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2021/07/25

西郷隆盛の伝記である。西郷隆盛は2018年のNHK大河ドラマの主人公である。著者は『誰某とその生涯』のタイトルで毎年の大河ドラマの主人公に関する書籍を出している。 本書から感じたことは、やはり島津斉彬の存在が大きかった。幕末の志士を主役にした歴史小説では志士が自発的に活躍したよう...

西郷隆盛の伝記である。西郷隆盛は2018年のNHK大河ドラマの主人公である。著者は『誰某とその生涯』のタイトルで毎年の大河ドラマの主人公に関する書籍を出している。 本書から感じたことは、やはり島津斉彬の存在が大きかった。幕末の志士を主役にした歴史小説では志士が自発的に活躍したように描かれるが、西郷の最初は斉彬の指示で動いていた。斉彬が長生きしたら幕末の歴史はどうなっていたか気になる。 逆に西郷は島津久光とは合わない。久光が斉彬に比べて劣るとされるが、久光と西郷の対立では久光の方が正しいこともあった。むしろ、西郷が感情的に反発している面があった。西郷には聖人君子のように論じられる傾向があるが、本書の面白い点は思い込みや好き嫌い、ストレスなどの人間臭さを描いているところにある。この視点は海音寺潮五郎『西郷と大久保と久光』と同じである。本書はストレスという現代的な概念も加わっている。 本書は淡々と記述していくが、時代背景や社会情勢も説明される。禁門の変の前に薩摩藩の評判が悪かった理由として、国内の綿と茶が高騰していたが、薩摩藩の密貿易が原因と思われていたと指摘する(131頁)。世の中、何が影響するか分からない。 西郷隆盛は経済政策では農本主義的と評価されがちであるが、近代化を敵視するものではなく、自由主義的な側面もあった。この点でも大久保利通のような官僚主導経済と対立する。土建国家に見られるように官僚主導経済は現代日本でも問題である。この点で西郷を再評価できるのではないか。 最後に西南戦争である。熊本鎮台を落とせず、逆に政府軍に鹿児島を攻められたことが痛かった。攻めることと守ること、どちらも不十分になってしまった。外に攻めるのではなく、鹿児島独立を志向すべきではなかったか。それが私学校の方向性とも重なる。

Posted byブクログ